反射炉(読み)はんしゃろ(英語表記)reverberatory furnace

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

反射炉
はんしゃろ
reverberatory furnace

金属の製錬や溶融に用いる炉の一種で、高温の燃焼ガスなどを炉内に送り装入物を加熱する。炉天井に蓄熱してその輻射(ふくしゃ)熱を利用するところからこの名がある。その特徴は、熱源が内容物と別の場所にあるため、燃料の種類を問わないことで、反面、直接熱効率は低く、ボイラーによる廃熱回収を行うのが通例である。

 パドル炉とよばれる初期の反射炉は、製鋼用として用いられた。日本でも江戸末期各地につくられた反射炉はこの型のもので、大砲鋳造用の青銅を溶解するのに用いられた。江川英龍(ひでたつ)(太郎左衛門)が伊豆韮山(にらやま)に建設した(1858)反射炉がもっとも有名である。

 製鋼用反射炉としては、現在の転炉が主力となるまで世界中で広く用いられた平炉がある。平炉は、炉の両側に大量のれんがを積んだ蓄熱室をもち、ガスの流れ方向をときどき切り換えて熱効率の向上を図っている。

 銅製錬で用いる反射炉は、長大な炉の一端には数多くのバーナーを並べ、銅鉱石を溶融するとともに一部酸化反応も行う。1300℃を超える大量の排ガスの熱は、ボイラーで蒸気あるいは電力として回収される。炉天井は高級れんがの吊天井(つりてんじょう)としてあり、操業しながら交換、修理が可能である。

 このような製錬用のほか、銅、アルミニウムなど金属・合金の溶融炉としてもよく用いられる炉である。

[阿座上竹四]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

反射炉
はんしゃろ
reverberatory furnace(kiln)

石炭,重油,ガスなどを燃料として火炎を炉内に噴射し,炉の天井からの反射熱で装入物を加熱し溶錬する炉。 17世紀にイギリスで創始され,のちアメリカで発達した。アメリカではいまも大規模のものが使われている。日本の製錬は溶鉱炉主流である。溶鉱炉に比し燃料効率は悪いが,高温の排出ガスをボイラ,送風加熱などに利用すれば補償できるので,近来見直されている。長さ数mの小型反射炉はほとんど銅合金溶解用である。最近の重油またはガス加熱の炉は火炎を直接炉床に吹きつけ,必ずしも反射熱によらず,したがって炉型も変化しているが,やはり反射炉といっている。日本では幕末江川太郎左衛門の築いた伊豆韮山の反射炉が有名であるが,薩摩,長州,水戸にも同様の遺跡がある。

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化学辞典 第2版の解説

反射炉
ハンシャロ
reverberatory furnace

非鉄金属の製錬に用いられる炉.平らで炉長の長い形状をしており,天井はアーチ形で炉短辺の一端にバーナーを備え,燃料を燃焼させ長い炎を出す.熱は直接または天井から反射し装入物を溶かす.装入は長辺に沿う天井の両側から行い,湯を炉床一面にたたえ,両側の窓から添加物を加えながら製錬を行う.装入は主として火口端に近い半分で行い,ここが溶錬部をなし,煙道端よりの残り半分はスラグや金属のたまり場となり,とくに前床はつけない.炉材はシリカまたはマグネシアれんがで,スラグ水準が侵されやすいので,ここに水ジャケットをつけることもある.

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百科事典マイペディアの解説

反射炉【はんしゃろ】

金属の製錬,溶解用の炉。耐火煉瓦で築造した長方形の広く浅い炉床をもち,炉の一端バーナーを備え,重油や微粉炭の燃焼熱とそれによって熱せられた天井からの熱放射(反射)で装入物を加熱する。今日では銅製錬用に大型の反射炉が使われる。電気炉にくらべ経費がかからないのが特徴。古く鉄の製錬,溶解に使われ,日本でも幕末に大砲製造のため各地に築造された。佐賀藩が1850年築造に着手したのが最初で薩摩藩水戸藩などでも築造,江川太郎左衛門が伊豆韮山(にらやま)に築いたものは最も有名。
→関連項目島津斉彬韮山反射炉萩反射炉平炉

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精選版 日本国語大辞典の解説

はんしゃ‐ろ【反射炉】

〘名〙 金属の製錬・溶融、鉱石の焙焼などに用いられる炉。燃料と加熱物が直接触れないように燃焼室と加熱室は分かれており、ドーム型の炉頂に沿って導かれる炎と、天井や壁からの輻射熱によって加熱・溶解する。
※財政経済史料‐一・財政・諸費・文武費・嘉永六年(1853)「是は反射炉出来之上銑鉄を以鋳造可仕積」

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旺文社日本史事典 三訂版の解説

反射炉
はんしゃろ

幕末,鉄製大砲鋳造のため幕府諸藩が建造した溶鉱炉
炉内で熱を反射させて高熱を得,金属を溶かすところからこの名がある。1850〜51年肥前藩の建造成功が最初で,幕府では '54年江川太郎左衛門が伊豆韮山 (にらやま) に築造を開始。薩摩藩・水戸藩・長州藩鳥取藩などでも建造された。

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世界大百科事典 第2版の解説

はんしゃろ【反射炉 reverberatory furnace】

LPGガス,石炭,重油などを燃料とし,燃焼した火炎が天井によって反射するように曲げられて金属を加熱溶解,製錬する炉。高炉が出現する以前には製錬用の炉として使用されてきたが,現在では,銅,アルミニウム,およびそれらの合金,可鍛鋳鉄などを大量に溶解する場合に広く採用されている。特徴は,一度に大量の溶解ができること(鋳鉄ではふつう1チャージ15~40tくらい),電気炉に比べて各種経費が安いこと,鋳鉄においては炭素量の少ない溶湯が得られることなどである。

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世界大百科事典内の反射炉の言及

【佐賀藩】より

…外圧への対応のため長崎警衛の体制を強固にするため軍事改革に重点を置いた施策が行われた。50年(嘉永3)10月に佐賀築地に反射炉を建設し大砲の鋳造を開始した。大砲の鋳造は蘭書の翻訳,鋳工や刀工の経験などが総合的に活用され,52年に実用に耐える鋳立ができるようになった。…

【殖産興業】より

…しかしその端緒はすでに,開港前後の幕府,諸藩の政策のなかにあらわれていた。たとえば鹿児島藩では1830‐40年代(天保・弘化期)の藩政改革ののち,集成館の造船・造機工場や洋式綿糸紡績所などの操業が開始され,諸藩や幕府でも反射炉,溶鉱炉,造船所の建設や国産振興,専売制度,交易拡大などの政策が,緊迫した内外の政局のなかで積極的に進められた。諸藩の産物会所や幕府の神戸商社(1867年設立)のほか,佐賀藩,鹿児島藩,水戸藩,盛岡藩,韮山代官所などの反射炉や溶鉱炉,長崎,横浜,横須賀の幕営製鉄所(造船・造機工場),鹿児島紡績所と奄美の製糖工場(鹿児島藩)などは,その代表的な例である。…

【鉄】より

… 錬鉄製造にも革命のときがきた。H.コートが従来の木炭精錬炉に代わって,すでに鉄の鋳造に利用されていた石炭たきの反射炉を銑鉄を錬鉄に変える炉にすることに成功したのである。ロストル(火格子)で自然送風によって石炭を燃やし,できる長い炎は火橋を越えて溶解室の銑鉄を溶かし,煙突に抜ける。…

【藩営マニュファクチュア】より

…これらの藩営工場では多くの人々がそれぞれ仕事を分担し,協力して働いていた。たとえば薩摩藩では,幕末の深刻な対外危機に対処するため藩主島津斉彬を中心に藩政改革を実施し,その一環として城内に反射炉を建設し,ついで溶鉱炉やガラス,陶磁器,農具,地雷,ガス灯などの各種製作所を設け,のちにこの場所は集成館と呼ばれてその規模を拡大し,1日に1200人を超す職工・人足が働いていた。佐賀藩でも幕末には反射炉を設け,さらに造船,鋳砲を目的に藩営工場を建設し,あるいは土佐藩でも開成館事業の一環として各種の藩営工場を計画し,これらは日本における近代工場創出の基盤ともなった。…

※「反射炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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