破棄移送(読み)はきいそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「破棄移送」の意味・わかりやすい解説

破棄移送
はきいそう

事後審査審が、原判決破棄するとともに、事件原裁判所以外の裁判所へ直接移送すること。

[大出良知]

民事訴訟における破棄移送

上告審が、上告理由ありとして原判決を破棄した場合に、原裁判所へ差し戻すと、差戻し前の原裁判所の裁判官がふたたびその裁判に関与せざるをえないような支障がある場合、原裁判所への差戻しにかえて、原裁判所と同等の他の裁判所へ移送する(民事訴訟法325条)。

[大出良知]

刑事訴訟における破棄移送

控訴審上告審がほぼ同様の場合に行う。まず、不法に管轄を認めたことを理由に原判決を破棄するときに、事件を、控訴審の場合は管轄第一審裁判所へ(刑事訴訟法399条)、上告審の場合は管轄控訴裁判所か管轄第一審裁判所へ移送する(同法412条)。管轄違い以外の理由で原判決を破棄する場合は、事件を原裁判所に差し戻すのにかえて、原裁判所と同等の他の裁判所か、上告審であればさらに第一審と同等の裁判所に移送することがある(同法400条、413条)。

[大出良知]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「破棄移送」の意味・わかりやすい解説

破棄移送
はきいそう

上訴審が判決によって原判決を破棄するとともに,差し戻しに代えて,事件を原裁判所以外の裁判所に直接移送し,あらためて審判させること。 (1) 民事訴訟法では,原判決に関与した裁判官は差し戻しまたは移送された事件の裁判に関与できず,また裁判官に除斥理由があるなど,原裁判所に差し戻すのを不適当とするときに行なわれる。 (2) 刑事訴訟法では,控訴審と上告審のいずれの裁判においても認められ,差し戻しに代えて移送する場合のほか,原判決が不法に管轄を認めたことを理由としてこれを破棄するときは,判決によって,控訴審の場合は管轄第1審裁判所に,上告審の場合は管轄控訴裁判所または管轄第1審裁判所に事件を移送する。ただし,控訴裁判所がその事件について第1審の管轄権をもっている場合 (裁判所法,独禁法など) には,破棄移送せず,みずから第1審として審判しなければならない。

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世界大百科事典(旧版)内の破棄移送の言及

【上告】より

…上告状に不備がありそれが補正できない場合に原裁判所の裁判長がする上告状の却下(314条2項,288条),上告が不適法でそれが補正不可能な場合や,定められた期間内に上告理由書が提出されなかったり,上告理由書の記載が定められた方式によっていない場合に原裁判所がする上告却下の決定(316条1項),同じ理由あるいは,上告の理由が明らかに312条1項および2項に規定する事由に該当しないことを理由として上告裁判所がする上告却下の決定(317条),上告裁判所が上告状,上告理由書,答弁書等の書類によって上告に理由がないと判断した場合に,口頭弁論を経ずにする上告棄却の判決(319条),上告裁判所が口頭弁論を経たうえで上告に理由なしとしてする上告棄却の判決,口頭弁論を経て,上告に理由があるものと上告裁判所が認めた場合にする原判決破棄の判決(325条1項)である。そして原判決を破棄する場合には,上告裁判所がみずから事実認定をやり直して事件の内容について判断を下すわけにいかないため,原則として事件を原審に差し戻す(破棄差戻し)か,原裁判所に差し戻すことが不都合なときは,同等の他の裁判所に移送(破棄移送)する(325条1項)。原判決を破棄するとはいえ,原裁判所の事実認定は十分に行われており,上告裁判所が法令の解釈適用をみずからやり直しさえすれば事件が解決できる場合と,事件が裁判所の権限に属さないという理由で原判決を破棄する場合には,上告裁判所はみずから事件を落着させる判決(破棄自判)をすることができる(326条)。…

※「破棄移送」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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