硫化タリウム(読み)リュウカタリウム

化学辞典 第2版 「硫化タリウム」の解説

硫化タリウム
リュウカタリウム
thallium sulfide

一価および三価のタリウム化合物Tl2S,Tl2S3が代表的で,ほかのモル比の化合物は,Tl2SとTl2S3をさまざまな比で含んでいると考えられる.一般に,単に硫化タリウムというと硫化タリウム(Ⅰ)Tl2Sをさす.【】硫化タリウム(Ⅰ)[thallium(Ⅰ) sulfide]:Tl2S(440.85).硫黄S 1 mol 量とタリウムTl 2 mol 量を加熱すると得られる.黒色固体.水素気流中で単体からつくったものは青黒い固体で六方晶系に属する.格子定数a = 12.20,c = 18.17 Å.密度8.39 g cm-3.融点448 ℃.加熱により分解する.水に難溶.酸には硫化水素を発生して溶ける.タリウム(Ⅰ)塩の酸性溶液からは硫化水素で沈殿しないが,中性のタリウム(Ⅰ)塩溶液からは硫化アンモニウムで定量的に沈殿する.コロイド状になりやすい.湿った状態では空気中で酸化されて酸化タリウム(Ⅰ)を生じる.水素気流中で加熱すると還元され,高温では完全に分解してタリウムを生じる.光電池に用いられる.[CAS 1314-97-2]【】硫化タリウム(Ⅲ)[thallium(Ⅲ) sulfide]:Tl2S3(504.98).タリウムを過剰の硫黄と加熱し過剰の硫黄を除くと得られる.黒色の固体.加熱すると硫黄を発生して徐々に分解する.融点約260 ℃(分解).希硫酸には硫化水素を発生して溶ける.硫化タリウム(Ⅰ)とともに融解するとTl2S2,Tl8S7などの組成をもつものが得られる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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