祇徳(読み)ぎとく

改訂新版 世界大百科事典 「祇徳」の意味・わかりやすい解説

祇徳 (ぎとく)
生没年:1702-54(元禄15-宝暦4)

江戸中期の俳人。初号は慈尺,字石,別号は自在庵,水光洞,遅日亭,湖南亭,宝捷斎等。剃髪して来蔵法師と号した。江戸蔵前で札差を業とし,俳諧は祇空に学んだ。当時江戸に盛んであった江戸座の俳諧にあきたらず,俳諧も古文辞を用いるべきだと考え,《誹諧句選》(1735・享保20)で,俳諧における古学を提唱した。荻生徂徠の古文辞学に影響され,また《五色墨》(1731)や師祇空の考えにも学ぶところがあったと思われる。芭蕉を重んじて,わび・さびを唱え,点取俳諧を否定し,平明な俳風を示したところに功績が認められるが,他に影響を与えることは少なかった。祇空門の為邦,莎鶏(祇明),魚貫(心祇)とともに,〈四時観(しじかん)〉の一派といわれる。1744年に《句餞別》を翻刻刊行している。これは,芭蕉が1687年(貞享4)10月末〈笈の小文〉の旅に出る際に,知友・門弟から贈られた餞別の詩歌・発句の類を収めたものである。編著は《二夜歌仙》《竹馬集》《夏筑波》《一言庭訓》《古学月見原》《芭蕉堂記》等。〈ながらへて来しや武蔵の月見原〉(《古学月見原》)。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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