神崎渡(読み)かんざきのわたし

日本歴史地名大系 「神崎渡」の解説

神崎渡
かんざきのわたし

神崎川にあった渡し。中世においての渡しの位置は未詳だが、江戸時代は大坂道が同川を越える場所にあり、神崎村と西成にしなり加島かしま(現大阪市淀川区)の間を年中船が往復していた。

山槐記」治承四年(一一八〇)八月二八日条によると、大和多武とうの(現奈良県桜井市)告文を捧げるために福原ふくはらを出発した摂政近衛基通の使者藤原定長が、神崎渡を経てくぼ(現大阪市)に至っている。同年一〇月には旧都(京都)から福原に参向する藤原忠親が川船でよど川・神崎川を下向し、「神崎渡上辺」に到着して一泊した(同書同月五日条)。忠親は翌一一月一六日にも福原に向かっており、この時も当渡で船を降りて輿に乗換えている(同書同日条)。仁治四年(一二四三)二月には讃岐へ配流となった紀伊高野山金剛峯こんごうぶ寺の道範が、淡路守護長沼時宗に護送されて船で淀川を下り、「神崎橋下」に宿泊しており(南海流浪記)、時期は定かではないが鎌倉期には橋が架けられていた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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