神仏に祈願の意を述べる文書。願文と同じ機能をもつが,宣命体の文章で書かれたものを告文といった。とくに天皇・上皇が即位・改元など重大なことについて,皇祖神や山陵に報告するための文書を指していうことが多く,山陵使らは,これを山陵や神前において微音で読み上げた後,焼きあげるのが本来であった。したがって,古い時代の告文は正文の形では残ることはありえない。ただ石清水八幡宮には,鎌倉初期の別当田中宗清の書写した《八幡宮寺告文部類》と題する書物が残されており,これによって平安時代の告文の書式を知ることができるし,草案の形で残されているものも少なくない。もっとも,中世にしばしば使われる告文という言葉は,以上とは別に,起請文(きしようもん)の別称としてであることが多い。起請文も神仏に祈った上で書き,誓うという点,性格の共通性があるためであろう。なお告文は,強文,剛文などとあて字が使われることもあるので,〈ごうもん〉とにごって読まれたようである。
執筆者:千々和 到
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「こうぶん」「ごうもん」とも読む。天皇から、神祇(じんぎ)に対し告げ申すことばを書き記した文の意と、臣下に告げ諭す文の意とがある。また一般には神仏への起請文(きしょうもん)、誓状(ちかいじょう)の別称としても用いられるほか、罪なき由を冥道(みょうどう)に告げ訴える文ともされる。文体は祝詞(のりと)と同じく宣命体(せんみょうたい)で書かれるのが原則。最初に述べた天皇からの告文は、正式には「御告文(ごこうもん/おつげぶみ)」という。1873年(明治6)には天皇親祭のときのものに限って御告文と称するようになり、従来、神社や山陵などに勅使が奏上した宣命は御祭文(ごさいもん)と改称された。
[森安 仁]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…神仏に祈願の意を述べる文書。願文と同じ機能をもつが,宣命体の文章で書かれたものを告文といった。とくに天皇・上皇が即位・改元など重大なことについて,皇祖神や山陵に報告するための文書を指していうことが多く,山陵使らは,これを山陵や神前において微音で読み上げた後,焼きあげるのが本来であった。…
※「告文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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