母体の胎盤を経由して児に移行する抗体で、乳児期初期の児の感染を防御するように働く。母子移行抗体ともよばれ、経胎盤免疫あるいは母子免疫の別名もある。ある病気に感染して母体にできた抗体はそのまま児に移行し、乳児期初期の児がその病気にかかることはない。しかし母体に抗体のない場合はその感染症にかかる可能性があり、これとは別に母体の感染がそのまま児に移行し感染症を引き起こすこともある。胎盤を経由する抗体の移行は、ヒトやサルなど特定の哺乳(ほにゅう)動物のみにみられるもので、ウシやウマあるいはブタなどではみられず、これらの動物は生後に母親の初乳を飲むことによって抗体を得る。
母体の免疫グロブリンのうちのIgG(免疫グロブリンG)だけが移行するが、IgG抗体は生後4~6か月の間にほぼ消失する。移行抗体が持続する期間は病原体の種類に応じてさまざまである。出生後は母乳からも免疫を得ることになるが、その後は出生児自身の抗体に頼ることになる。
[編集部 2017年1月19日]
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