日本大百科全書(ニッポニカ) 「穿孔貝」の意味・わかりやすい解説
穿孔貝
せんこうがい
boring shell
貝類のうち、地物に穴をあけてそれをすみかとする二枚貝類、および他の貝に穴をあけてその肉を餌(えさ)とする巻き貝類を、ともに穿孔貝という。
二枚貝の例は、岩盤に穿孔するイシマテガイ、カモメガイ、粘土質の海底などに穿孔するウミタケガイ、海中の木材に穿孔するフナクイムシなどがある。これらのうちフナクイムシなどは木材をすみかとするだけでなく、やはり穿孔という機械的作用によって削った木材を栄養の一部としている。しかし、他の種では、穿孔を利用するのはすみかの場合のみで、栄養の摂取は、水管から取り入れる呼吸水中の有機物を濾過(ろか)するといった、通常の二枚貝類と同様の方法によっている。すべての穿孔性二枚貝は、しばしば木造船や海中構築物の破壊をもたらす。
一方の巻き貝の例は、主としてタマガイ科とアクキガイ科の巻き貝に代表される。タマガイ科は砂底中の二枚貝などを襲い、アクキガイ科はカキ類など表生性の貝を襲い、酸を分泌して殻を軟化させる補助的機能もあると思われるが、おもに歯舌の機械的な作用により穴をあけ、そこから吻(ふん)を挿入して中の肉を食べる。このため、穿孔貝はいずれも養殖業者からは害敵として嫌われている。
[奥谷喬司]