改訂新版 世界大百科事典 「イシマテガイ」の意味・わかりやすい解説
イシマテガイ
Lithophaga curta(=Leiosolenus curta)
岩に穴を掘ってその中にすむイガイ科の二枚貝。イシワリ(石割)ともいわれる。殻の長さ5.5cm,高さ1.8cm,膨らみ1.5cm。前後に長い円筒形。殻表は栗褐色の皮で覆われるが,さらにその上に灰色の石灰が沈着していて,これには縦に弱いしわがある。内面は青白色。軟体は前後の筋肉で殻に付着し,足は運動しないので小さく,それから糸を出す。体の後端を穴の口のほうへ向けている。外套(がいとう)膜で出入水口ができそこから呼吸のための海水とともに餌が流入する。穿孔(せんこう)には口吻(こうふん)の酸腺より出る酸で石灰分が溶かされて泥岩が軟らかくなったのを掘り進む。穿孔するとその中で一生を過ごすので三浦地方でシミズ(日見ず)の方言がある。肉は汁物にして美味。イタリア,ナポリ近郊のポッツオリにあるセラピス神殿の柱には,イシマテガイに近縁のヨーロッパシギノハシL.lithophagaの穴列があり,この神殿が建立後,いったん海中に沈み,再び隆起したことを示しているので世界的に有名。イシマテガイの仲間は英名ではdate shellといわれる。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報