江戸初期の数学書。1639年(寛永16)刊。著者の今村知商(生没年不詳)は毛利重能の弟子で,毛利の評判を聞いて毛利の塾に入門した。しかし,今村が毛利から教わった内容は直線図形に関する計算であって,円や曲線に関する求積は今村自身がくふうしたことがこの書の序文に見える。《算用記》《割算書》《塵劫記》といずれも和文で書かれているのに,本書は漢文で書かれた公式集で,当時考えられた数学の問題がすべてまとめられている。その形式は中国の伝統に従い9章に分ける。江戸時代の数学は,《塵劫記》と《竪亥録》という優れた2種類の教科書により出発したといってよい。今村は,その翌年に数学の公式をすべて歌になおしてまとめた《因帰算歌》を出版した。《竪亥録》は弟子の安藤有益により詳しく解説され,《竪亥録仮名抄》(1662)と題されて出版された。
執筆者:下平 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…1631年版には,多色刷りの挿絵まで入れられている。今村の《竪亥録(じゆがいろく)》(1639)は《塵劫記》とはまったく対照的に,説明も漢文で書かれ,内容も当時最高の公式をまとめた公式集である。今村自身のくふうも含まれている。…
※「竪亥録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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