算経十書(読み)さんけいじっしょ(その他表記)Suàn jīng shí shū

改訂新版 世界大百科事典 「算経十書」の意味・わかりやすい解説

算経十書 (さんけいじっしょ)
Suàn jīng shí shū

中国の古典数学書の総称。唐代には数学者を養成する学校〈算学〉が設けられ,学生を2班に分け教授が行われた。第1班は《九章算術》《海島算経》《孫子算経》《五曹算経》《張邱建算経》《夏侯陽算経》《周髀算経》《五経算術》を,第2班では《綴術(てつじゆつ)》《緝古算経》を教科書とし,《数術記遺》《三等数》を兼習した。兼習を除く10種の数学書が《算経十書》と呼ばれた。唐の王孝通が著した《緝古算経》を除いて,他はいずれも唐以前の古算書である。劉宋の祖冲之による《綴術》はきわめて程度の高いものであったが,唐・宋の間に失われ現存していない。しかし他はいずれも宋代に刊行された。元・明時代には一時その伝承が見失われたが,清代にはいって再発見され,《算経十書》の名で幾つかの版が刊行されてきた。《綴術》の代りに《数術記遺》を加え,一応〈十部算経〉となっている。このうち代表的な古算書は《九章算術》である。銭宝琮が校点を加えた《算経十書》(1963,中華書局刊)が便利である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「算経十書」の意味・わかりやすい解説

算経十書
さんけいじっしょ

中国古代の数学書で今日現存するものが10種類あり、これを算経十書と称する。すなわち『周髀算経(しゅうひさんけい)』『九章算術』『海島算経』『孫子算経』『五曹(ごそう)算経』『夏侯陽算経』『張邱建(ちょうきゅうけん)算経』『五経算術』『緝古(しゅうこ)算経』に『綴術(てつじゅつ)』を加えたものである。このうち『綴術』は古くから亡失し、そのかわりに『数術記遺』を加えて算経十書と称している。この十書は唐代には国学においてテキストとして用いられたものである。このうち『海島算経』は『九章算術』の句股(こうこ)章(直角三角形の性質を使う計算)の拡張であり、『五経算術』『五曹算術』は小著でいうに足りない。『夏侯陽算経』は残欠である。したがって、このうち重要なものは『孫子算経』と『張邱建算経』で、この二つは『九章算術』に比べてやや初歩的であるが、よくまとまっている。この両書は正編、続編の関係にある。『緝古算経』は唐代の著で、もっとも新しく、三次方程式を取り扱っている。

[大矢真一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「算経十書」の意味・わかりやすい解説

算経十書
さんけいじっしょ
Suan-jing shi-shu

中国,古代の数学書十種。『周髀算経』『九章算術』『海島算経』『孫子算経』『五曹算経』『夏侯陽算経』『張邱建算経』『五経算術』『緝古算経』『数術記遺』をいう。唐代の官僚庶民子弟を集めて数学を教える学校 (「算学」といった) で教科書として使用された。

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