糸球体基底膜菲薄化症候群

内科学 第10版 の解説

糸球体基底膜菲薄化症候群(遺伝性腎疾患)

概念
 びまん性に糸球体基底膜GBM)が菲薄化し,血尿を呈する症候群である.以前は良性家族性血尿といわれた.
原因・病因
1)遺伝性:
常染色体優性遺伝.約半数は常染色体劣性Alport症候群のキャリアと考えられ,COL4A3,COL4A4遺伝子変異も検出されている.
2)二次性:
糸球体の傷害・修復機転,特に塞栓や血管内皮増殖による糸球体毛細血管の膨張が原因といわれる.
発生率
 全人口の約1%と頻度は高い.
病理
 光顕・蛍光所見で異常はなく,電顕でGBMの厚さが正常の370 nm(男),320 nm(女)に比して,250 nm未満(2~11歳では180 nm未満)とされる.Alport症候群のような層状断裂はなく,びまん性の基底膜の菲薄化(図11-5-2)が特徴的である.
臨床症状・検査成績・経過・予後
 小児期に顕微鏡的血尿で発見される.肉眼的血尿はときにみられる(5~22%).蛋白尿はまれである.腎予後は大部分が良好である.
診断・鑑別診断
 診断は腎生検による.菲薄化のみを認める初期のAlport症候群との鑑別が最も重要であり,家族歴,難聴,眼症状などを参考にする.血尿のみの患者の腎生検では約45%が本症であり,約27%がIgA腎症である.[望月俊雄]
■文献
Foster K, Markowitz GS, et al: Pathology of thin basement membrane nephropathy. Semin Nephrol, 25: 149-158, 2005.
Gregory MC: The clinical features of thin basement membrane nephropathy. Semin Nephrol, 25: 140-145, 2005.
Wang YY, Savige J: The epidemiology of thin basement membrane nephropathy. Semin Nephrol, 25: 136-139, 2005.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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