純友追討記(読み)すみともついとうき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「純友追討記」の意味・わかりやすい解説

純友追討記
すみともついとうき

平安時代中期の軍記物語藤原純友が起した天慶の乱の始末を記した書。1巻。著者成立未詳。寛治8 (1094) 年成立の『扶桑略記』に引用されているので,それ以前に成立。和様漢文。伊予掾 (いよのじょう) の純友が海賊首領となり,関東で起った平将門の乱を聞いて天慶2 (939) 年謀反を企ててから,追捕使小野好古らに攻められ,同4年筑前博多津で捕えられ,獄死するまでのことを簡潔に描いている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「純友追討記」の意味・わかりやすい解説

純友追討記
すみともついとうき

平安時代の軍記物。著者、成立年代ともに不詳であるが、『扶桑略記(ふそうりゃっき)』天慶(てんぎょう)3年(940)11月21日条に引用されており、11世紀以前に成立したことは確実。10世紀に藤原純友が瀬戸内海の海賊を率いて起こした反乱の内容、その追討過程を略述する。純友の乱の研究の基本的史料であるが、途中の年月を欠く。鎌倉初期の『古事談』にも引用。『群書類従』所収本は『扶桑略記』をもとに『古事談』をもって校している。なお『今昔物語』(12世紀前半)巻25の純友説話は、これによっていない。

[福田豊彦]

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世界大百科事典(旧版)内の純友追討記の言及

【将門記】より

…現存する伝本がいずれも巻首を欠いているため,その全容を知ることができないが,本書の記事を抄録した《将門記略》などによると,将門の皇胤としての系譜を述べる堂々とした書出しであったらしく,〈女論〉(女性をめぐるトラブル)から将門がその伯父たちと対立し,その同族間の紛争が拡大して,東国を舞台とする反乱事件へとエスカレートするてんまつ,関八州を制圧してみずから〈新皇〉と称したのもつかのまで,その後軍兵たちを帰休させたすきを下野国の押領使藤原秀郷(ひでさと)らに奇襲され,奮戦むなしく本拠地の石井付近であっけなく滅亡するまでの経緯を,実録的な筆致で克明に描き出しており,首尾整った一編の独立した作品としての体裁を示している。この反乱事件については,公の立場からの追討記録と思われる《将門誅害日記(まさかどちゆうがいにつき)》があり,また同時代の藤原純友(すみとも)の西海での反乱(藤原純友の乱)を扱った《純友追討記》のような作品があるが,これらの追討記事と違って,本書の場合は,その叙述の視点が反逆者である将門にきわめて近いところにすえられているのが大きな特色で,そこにこの書の〈軍記文学〉としての独自な展開と意義を認めることができる。文体は和臭の強いいわゆる変格漢文で,すこぶる難解だが,故事の引用や比喩などの文飾に独特な味わいがあり,ことにその戦闘の叙述はリアリティと迫力に富んでおり,のちの軍記文学の萌芽を思わせるものがある。…

※「純友追討記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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