神武(じんむ)天皇から堀河(ほりかわ)天皇までの漢文編年体の歴史書。平安末期の成立で、著者は阿闍梨皇円(あじゃりこうえん)(?―1169)。仏教関係に重点が置かれている。堀河天皇の1094年(嘉保1)で終わっているので、この後に成立したことは確かである。13世紀後半に成立したと考えられている『本朝書籍目録(ほんちょうしょじゃくもくろく)』によれば30巻あったというが、現在は散逸して16巻分のほかに神武から平城(へいぜい)天皇までの抄本を残すのみである。「六国史(りっこくし)」をはじめ寺院関係の古伝などを参考に編纂(へんさん)されたもので出典を明記しているものもある。『純友(すみとも)追討記』を引くなど仏教関係以外の興味ある記事もあるが、概して仏教関係の記事で満ちている。それらは信頼できないところもあるが、出典を明示した引用書で今日失われている貴重な史料もある。しかし史料批判を加えるべきものが多いことは疑えない。著者の皇円は延暦(えんりゃく)寺の功徳院(くどくいん)に居住した天台宗の学僧で、弟子に有名な法然(ほうねん)(源空)がいる。『国史大系』に所収。
[朧谷 寿]
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仏教に重点をおいた編年体の歴史書。30巻。延暦寺の皇円阿闍梨(こうえんあじゃり)の著。12世紀後半の成立か。現存するものは2~6巻,20~30巻の計16巻と神武天皇から平城天皇までの抄本のみ。神武天皇即位から堀河天皇の1094年(嘉保元)までを記す。史料としての信頼性はかならずしも高くないが,六国史(りっこくし)その他の史書,寺社の縁起,僧伝などの古書を出典をあげて豊富に引用する。とくに仏教関係記事には他にみられぬ貴重な史料が多い。「改定史籍集覧」「国史大系」所収。
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… 《続日本紀》和銅6年(713)5月2日条に〈畿内七道諸国は,郡郷の名は好き字を著け,その郡内に生ずるところの銀銅,彩色,草木,禽獣,魚虫等の物は具(つぶさ)にその品目を録し,及び土地の沃塉(よくせき),山川原野の名号の所由(いわれ),また古老相伝の旧聞異事は,史籍に載せて言上せよ〉とある。この命令を大きく分ければ,前半は物産関係条項,後半は土俗関係条項となるが,これを風土記撰進のことであるとしたのは,平安時代の天台の学僧阿闍梨皇円述作の《扶桑略記》(1094ころ)である。彼がどんな資料によったかは不明だが,現在からみても妥当である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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