平安中期の瀬戸内海海賊の組織者。大宰少弐(だざいのしょうに)藤原良範(よしのり)の子。また伊予前司(いよのぜんじ)高橋友久の子とも伝える。伊予掾(じょう)。936年(承平6)、伊予日振島(ひぶりじま)(愛媛県宇和島市)に拠(よ)る海賊、1000余艘(そう)、2500余人の首領であったが、国守紀淑人(きのよしひと)のもとに投降した。『本朝世紀』によると、純友はこの年に追捕(ついぶ)海賊の宣旨(せんじ)を被っており、海賊の動きはしばらく鎮静化するので、その組織力の大きかったことがわかる。しかし939年(天慶2)12月、備前介(びぜんのすけ)藤原子高(さねたか)らの一行を摂津で襲ってふたたび反乱。東国の平将門(まさかど)の反乱と同時であったため、東西の兵乱として貴族たちを震撼(しんかん)させた。
朝廷は純友に従(じゅ)五位下の位階を授けて懐柔、西海の反乱は一時鎮まるが、940年5月に征東軍が帰洛(きらく)すると純友士卒の追捕を令し、西海の追討が本格化する。純友は讃岐(さぬき)の国府を攻めて国軍を走らせ、備前、備後(びんご)の兵船を焼いたが、朝廷は長官小野好古(よしふる)・次官源経基(つねもと)らの追捕使を任じてこれにあたらせた。海賊軍は紀伊、安芸(あき)、周防(すおう)などを襲うがしだいに追い詰められ、941年5月に大宰府を襲撃するが追討軍に敗れて四散する。伊予に逃れた純友は6月29日、子息とともに警固使橘遠保(たちばなのとおやす)に討たれた。遠保に捕らえられて獄中で死んだとも伝える。純友与党の追捕もこの年内に完了するが、その経過をみると、純友は九州、四国、中国地方の瀬戸内一帯の海賊を組織していたことがわかる。
[福田豊彦]
『福田豊彦著『平将門の乱』(岩波新書)』
(瀧浪貞子)
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平安中期の地方豪族。大宰少弐良範の子,あるいは伊予前司高橋友久の子で良範の養子とも。伊予掾として936年(承平6)海賊追捕の宣旨をうけ,伊予守兼追捕南海道使紀淑人に協力してその追捕にあたった。しかし939年(天慶2)12月東国で平将門の乱が起こると,紀淑人の制止を振り切って反乱に立ちあがり,瀬戸内海に一大勢力となる。将門と共謀し東西呼応して蜂起したとの説には根拠がないが,将門の乱による混乱を好機と判断したことは考えられる。純友は東国に自立しようとした将門とちがい,京都への侵攻を意図した可能性があるが,940年2月将門の敗死によって機を失う。同月従五位下を授けられたが,8月以降,伊予・讃岐・安芸・周防・土佐などを攻撃。追捕使小野好古,諸国警固使らの活躍によりしだいに追いつめられ,翌941年5月大宰府を攻撃して敗れ,6月本拠である伊予の日振(ひぶり)島に逃げ帰ったところを橘遠保によって討たれた。
執筆者:高橋 昌明
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…律令制の動揺とともに伊予国は海賊の活躍する舞台となった。とくに前伊予掾藤原純友は,939年(天慶2)反乱をおこし,伊予ばかりでなく,讃岐,周防,土佐を侵略し,さらに大宰府にまで進出した。律令政府は,小野好古,橘遠保らの軍勢を派遣して,941年にこれを鎮圧した。…
…10世紀に関東で起きた反乱事件。同時に西海で起こった藤原純友の反乱とともに〈承平・天慶の乱〉,あるいは〈天慶の乱〉ともいう。下総北部を地盤としていた将門は,935年(承平5)以来,常陸西部に館をもつ一族の平国香,平貞盛,良兼,良正らと合戦を繰り返していたが,939年(天慶2)11月に常陸国衙を略奪して焼き払い,国守藤原維幾らを捕らえた。…
…無人島の沖ノ島,横島,御五神(おいつかみ)島などを属島とし,それらを合わせると5.14km2。936年(承平6)藤原純友の一党が船1000余艘を擁し,この島に屯集したと《日本紀略》にみえる。近世以来イワシ網漁が盛んで,網主でもあった庄屋の清家氏は島の開発を進め海運業も営み,〈島大名〉と称された。…
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