日本大百科全書(ニッポニカ) 「経過分析」の意味・わかりやすい解説
経過分析
けいかぶんせき
process analysis
経済数量の時間的変動の過程を分析する手法の一つ。その時間を断続的な期間にくぎってとらえると期間分析period analysisとなり、時間を連続的なものとしてとらえると比率分析rate analysisとなる。数学的には、前者は定差(差分)方程式、後者は微分方程式によって分析される。
期間分析の例としては、第一に事前・事後分析ex-ante and ex-post analysisがあげられる。これは、たとえば、前期に計画された投資量が計画された貯蓄量より大きいと、その差は当期の在庫品の減少(マイナスの投資)をもたらし、その結果、当期の実現された(事後的)投資は事後的貯蓄に等しくなるというような形で、変動過程を追うものである。第二はラグ分析lag analysisで、当期の所得は次期以後に消費支出され、当期の投資は前期の所得(産出高)の大きさによって決定され、さらにその投資は次期以後に完成して生産物を供給するようになるというように、経済活動の決定、実行、効果が時間的遅れを伴うことを中心に変動過程を追うものである。
比率分析の例としては成長率理論があげられる。成長率を前期に対する当期の増加率ととれば、その値は期間の長短に関係なく決められるから、成長過程を連続的なものとしてとらえることができる。
[一杉哲也]