改訂新版 世界大百科事典 「期間分析」の意味・わかりやすい解説
期間分析 (きかんぶんせき)
period analysis
経済現象を動学的に,すなわち時間を体系の変数として明示的に取り入れた形で分析しようとするとき,時間を取り扱う方法に,経済学では期間分析と連続分析continuous analysisの二通りがある。このうち期間分析とは,時間の流れを通常同じ長さと仮定される〈期間〉の連鎖として取り扱う方法である。ここでいう期間とは,日常生活での日,週,月,年などの時間の区切りを意味するものではない。市場が開かれた時点から次に市場が開かれる時点までが,期間分析でいう期間である(期間分析では,市場は常時開かれているのではなく,任意に定められた時間間隔を置いて断続的に開かれると仮定される)。
期間分析においては次のような段取りに従って経済活動が行われると仮定される。各期の初めに市場が開かれ,各財の価格が模索過程によって決定される。すなわち,まずオークショナーが暫定価格を決め,企業,家計はこの暫定価格に対応する各財の需要・供給計画を決定する。オークショナーは,企業,家計の計画需要量,供給量を合計する。計画需要量が計画供給量を上(下)回る財については,価格を上昇(下落)させて新たな暫定価格をオークショナーは定める。新たな暫定価格についても以上のことが繰り返される。企業,家計の計画供給量と需要量の合計がすべての財について一致するような暫定価格(均衡価格)に到達するまで,この過程は繰り返される。
しかしながら,均衡価格は瞬時にして到達すると仮定され,各期の期間中続けて,企業,家計は均衡価格に対応する需要・供給計画にのっとって生産,消費活動をすると仮定される。したがって,各財の生産,消費水準は,期間中一定の水準で行われ変動することはなく,また財の交換は,期初に開かれた市場での決定に従って,期間中同一の価格で行われる。期間の長さに等しい時間がたつと次の期に入る。期初には再び市場が開かれ,前の期での貯蓄,投資や,技術水準,嗜好の変化の結果,一般に前期とは異なる均衡価格が決まる。再び,新たな均衡価格に対応する需要・供給計画に従って,期間中一定の水準で生産,消費活動が行われる。
期間分析では,以上みたように市場が断続的にしか開かれないと仮定され,その結果,価格,生産,消費水準も断続的にしか変化しない。これに対して連続分析では,市場は各時点でつねに開かれると仮定される。このため連続分析では,価格,生産,消費水準はつねに変わる。数学的には期間分析は差分方程式による叙述,連続分析は微分方程式による叙述を意味する。
執筆者:小谷 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報