経済諸変数の異時的因果関係によって生起する,時間の経過にともなう経済変動の特性を解明することを目的とする研究。これに対し経済静学economic staticsは,ある時点または1単位期間における経済の均衡状態(短期均衡),あるいは時間を通じて不変な状態,いわゆる定常状態(長期均衡)の特性を明らかにしようとする。たとえば国民総生産(GNP)についていえば,固定資本は労働人口などとともに国民総生産に影響を及ぼす重要な要因であるが,固定資本設備の建設期間は長いので今年度の投資は直ちには生産力として稼働しえない。したがって静学において,ある年度の国民総生産の均衡水準(短期均衡水準)の決定を分析するときには,資本は労働人口などとともに所与とみなされる。その結果,国民総生産の水準は,資本存在量,労働人口や経済政策に依存して定まる。資本などこれら所与の条件の変化がこの水準に及ぼす効果を分析するのが比較静学である。このように今年度の国民総生産は資本存在量に依存するが,この資本量は過去の投資の累積であり,また今年度の国民総生産への需要である投資は将来の生産力の増大をもたらし,より多くの国民総生産を可能にする。ここに,今年度の資本量→今年度の国民総生産と投資→次年度の資本量→次年度の国民総生産と投資という,異なる年度の経済変数間の因果関係が存在することがわかる。経済動学では,このような異時的関係の主要なものすべてを考慮し,それによってどのような経済変動が生起するかを分析する。この変動経路に及ぼす経済政策その他与件の変化の効果を分析するのが比較動学である。景気循環,経済成長論,インフレーションの加速過程の分析などは経済動学の代表的な例である。また,人によっては市場機構の模索過程の分析をも経済動学とみなすことがある。
執筆者:大槻 幹郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「経済静学・経済動学」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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