日本大百科全書(ニッポニカ) 「緑の光線」の意味・わかりやすい解説
緑の光線
みどりのこうせん
Le Rayon Vert
フランス映画。1986年作品。監督エリック・ロメール。恋愛話を中心に若い女性たちの日常生活の些細(ささい)なできごとを軽やかなタッチで描く「喜劇と格言劇」シリーズ(1980~1986)の5作目にあたり、1980年代ロメールの代表作。恋人と別れて孤独なヒロインが、夏のバカンスをどう過ごせば満足できるか悶々(もんもん)と思い悩みながら、パリやシェルブール、ビアリッツなどフランス各地を移動する。自然にみえながらも練り上げられた台詞(せりふ)や脚本を重視するロメールだが、この作品では脚本に頼らず、台詞は現場で即興的につくられた。ロメールのほかには撮影・録音・製作管理をそれぞれ担当する女性3人という最小編成のクルーで、16ミリ、同時録音によるロケーション撮影を敢行。この身軽なドキュメンタリー的スタイルはヌーベル・バーグの原点を思い出させる。ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。
[伊津野知多]