縮合リン酸(読み)シュクゴウリンサン

化学辞典 第2版 「縮合リン酸」の解説

縮合リン酸(塩)
シュクゴウリンサン
condensed phosphoric acid(condensed phosphate)

2個以上の四面体型のP O43-が,互いに一頂点のO原子を共有してつながったイソポリ酸イオンをもつ酸,およびその塩をいう.次の4種類に分類される.【鎖状オリゴマー [PnO3n+1](n+2)-catena-ポリリン酸(catena-polyphosphoric acid).nが6までの各化合物は単離,確認されている.n = 2のものはcatena-二リン酸(catena-は省略することもある),通称はピロリン酸,n = 3のものはcatena-三リン酸,通称はトリポリリン酸,n = 4のものはcatena-四リン酸,通称はテトラポリリン酸などである.【】長い鎖状のもの:メタリン酸(metaphosphoric acid).ガラス状リン酸ともいわれる.市販品にはNa塩を加えて固体にしたものもある.各種縮合リン酸塩の混合物で,グラハム(Graham)の塩,マドレル(Maddrell)の塩,クロール(Kurrol)の塩などとよばれる,鎖の形が異なり,性質も互いにやや異なったメタリン酸塩がある.【環状のもの [(PO3)n]n(n ≧ 3):cyclo-ポリリン酸(cyclo-polyphosphoric acid)鎖が閉じて環状になったもので,n = 3~8のものは単離,確認されている.n = 3のものはcyclo-三リン酸,通称は三メタリン酸,n = 4のものはcyclo-四リン酸,通称は四メタリン酸などである.【】ウルトラリン酸塩(ultraphosphate):橋かけ構造を含む鎖状または環状のポリリン酸で,組成式[H2O]x[P2O5]yにおいて(x/y) < 1のものをいう.極限の(x/y) = 1はメタリン酸,(x/y) = 0はP2O5である.大分子のものに多い.

各縮合リン酸は,一般にオルトリン酸,またはこれにP2O5を加えたものを,それぞれの目的物に合った加熱処理を行った後,生成混合物を精製すると得られる.混合物は強リン酸(strong phosphoric acid)またはスーパーリン酸(superphosphoric acid)といい,そのまま利用することも多い.塩は,リン酸と金属酸化物とを混合して加熱脱水するか,または,オルトリン酸一水素塩と二水素塩を混合加熱脱水すると得られる.これらの縮合酸は,一般にかなり強い酸で,酸も塩も水に溶けやすいものが多い.ただし,重金属塩などで不溶のものもある.鎖や環は比較的安定で,アルカリ水溶液で加熱処理して分裂させる.強リン酸は,強リン酸分解法に用いられる.室温では粘性があるが,加熱するとさらさらの液になり,ガラス,アルミナなど,通常の溶媒には溶けないものも溶かせる.さらにこれに酸化剤(KIO3など)を加えると,Wや黒鉛も溶かし,還元剤(Snなど)を加えると鉱石や不溶性の硫酸塩等も溶かす.鎖状の縮合リン酸(とくに三リン酸塩)は,金属錯体を形成しやすいので,Na塩は金属イオン封鎖剤(マスキング剤)として水の軟化,食品への添加などに用いられる.グラハムの塩も水の軟化や缶石の除去などに用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の縮合リン酸の言及

【リン酸(燐酸)】より

…また,骨や歯の主成分はリン酸カルシウムと炭酸カルシウムの複塩である。また,PO4が縮合した形態をもつ酸は縮合リン酸(スーパーリン酸)と呼び,強酸である。 実験室で100%リン酸を得るためには,白金皿中で85%リン酸を減圧濃縮し,ついでガラス製容器に移して38℃でゆっくりと冷却し結晶させる。…

※「縮合リン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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