日本大百科全書(ニッポニカ) 「耐火れんが」の意味・わかりやすい解説
耐火れんが
たいかれんが
firebrick
refractory
高温度のもとで溶融しにくい非金属材料のうち、使用に便利なように一定の形に成形したもの。まず第一に高温に耐えることが条件であるが、化学的耐食性があること、常温、高温ともに強度が大きいこと、耐摩耗性があること、熱的変形が少ないこと、温度の急変による破壊作用に耐えることなどの性質が要求される。日本工業規格(JIS(ジス))による耐火度測定方法で、SK26(ゼーゲル・コーン溶倒温度1580℃)以上の耐火度をもつ。
日本における耐火れんがの工業的製造の歴史は、江戸時代末期に幕府が伊豆韮山(にらやま)に建設した反射炉用として、天城(あまぎ)山南麓(ろく)梨本(なしもと)村の良質な白土産地に登窯(のぼりがま)をつくり、耐火れんがを焼かせたことに始まる。
耐火れんがの原料は天然産鉱物をそのまま使用することもあるが、原料を単味または配合して一次焼成し(シャモット)、これを粉砕したものを原料とすることが多い。製造方法による分類としては、原料を加圧成形しただけの不焼成れんが、焼成してつくった焼成れんが、原料を電気炉で高温溶融して型に鋳込んでつくる電鋳れんがに分けられる。種類は非常に多いが、もっとも一般的なものは、シャモットれんが、高アルミナれんが、珪石(けいせき)れんが、クロムマグネシアれんが、ドロマイトれんが、マグネシアれんが、フォルステライトれんがなどがある。また、寿命の長い耐久性の大きいれんがが開発され、鉄鋼用にはれんがの色の白いものにかわり、黒いものが多く使われるようになっている。従来の粘土質れんがから、カーボン系れんが、たとえば、シリコンカーバイドれんが、アルミナカーボンれんが、マグネシアカーボンれんがなど、高品位化している。
耐火れんがのおもな用途は鉄鋼関係の炉材で、全体の60%以上を占めているが、スチールトン当りの耐火れんがの原単位は年々低下し、1970年(昭和45)の23.5キログラムに対して、80年には8.8キログラム、2002年(平成14)には8.0キログラムと約3分の1に減っている。2006年の耐火れんがの生産量は44万トンであり、高品位化による使用量低下の結果、ピーク時の約15%に激減している。
[工藤矩弘]