動物の強いにおいのある分泌液をだす腺。脊椎動物では皮膚腺の特殊化したもののことであり,その所在はさまざまであるが,においを発する物質を分泌することからこのように呼ばれる。よく知られている臭腺としては,哺乳類ではイタチ,スカンクの肛門腺,ジャコウジカ,ジャコウネコの麝香(じやこう)腺,ウサギの鼠径(そけい)腺,ニホンカモシカの眼下腺などがある。トガリネズミの体側に発達している放臭腺などのように定まった名前のつけられていない臭腺も多い。臭腺の分泌するにおいの物質には臭腺自身がつくりだしたものと,臭腺の分泌物をもとにしてバクテリアのつくりだしたものとがあるが,においの物質は主にフェロモンとして機能していると考えられている。また臭腺の分泌するにおいの物質のなかには,ジャコウジカの麝香やジャコウネコの麝猫香(じやびようこう)のように香料の材料として人類に利用されているものもある。
昆虫では,半翅(はんし)目のカメムシ類が,悪臭を発することでよく知られている。成虫は,胸部の後脚の根元に開口する1対の分泌腺を持っている。ゴミムシ類は,別名ヘッピリムシと呼ばれるように刺激性の悪臭のあるガスを腹端から噴射する。カメムシの臭腺分泌物には主にアルデヒド類が,またゴミムシ類の分泌物には脂肪酸,キノン,フェノールなどが確認されている。多くの昆虫が刺激されると反射的に悪臭のある分泌物をだすのは,敵の攻撃から身を守るための防御行動で,臭腺からでる分泌物は防御物質であると考えられている。
執筆者:佐藤 英明+高橋 正三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物がもつ、強いにおいのある液を分泌する腺をいう。臭液腺または悪臭腺ともいい、皮脂腺が特殊化したものである。脊椎(せきつい)動物および無脊椎動物にみられ、前者は多細胞腺、後者は単細胞腺からなる。哺乳(ほにゅう)類ではシカ、カモシカ、レイヨウなどにある眼下腺、指間腺、中足腺、鼠径(そけい)腺、イヌやネコなどにある肛門(こうもん)腺、ジャコウネコの会陰嚢(えいんのう)、ジャコウネコやビーバーの包皮嚢などがあり、主として縄張りのにおいづけや異性の誘引などに用いるが、スカンクの肛門腺のように、液を発射して護身に用いるものもある。昆虫ではカメムシ類(クサガメ)、ハサミムシ、チャバネゴキブリなどにみられる。
[吉行瑞子]
…哺乳類の肛門付近にある1対の外分泌腺で,皮膚腺の特殊化したものである。食肉目の動物,とくにイタチやスカンクで発達しており,臭気ある物質を分泌することから臭腺とも呼ばれる。イタチでは〈最後っペ〉をつくる器官として有名である。…
※「臭腺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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