肝嚢胞

内科学 第10版 「肝嚢胞」の解説

肝嚢胞(肝膿瘍・肝嚢胞)

概念
 肝囊胞は内壁を1層の上皮細胞に覆われ,漿液性の内容液を入れた囊状病変が肝内にできる先天性の良性疾患である.肝囊胞は一般に囊胞性肝疾患(表9-13-1)のなかでも原発性実質性肝囊胞を指す.単発の場合もあるが,多発性の場合もある.
病理・病態生理
 肝囊胞の原因は不明である.囊胞内壁は1層の上皮細部に被われている.内容液の多くは漿液性である.大きさはさまざまで,多発例もしばしば認められる.多発性肝囊胞(polycystic liver disease:PCLD)は遺伝性疾患であり,肝内胆管の形成異常のために発症すると考えられている.
臨床症状
 小さい数cm以下のものはほとんどが無症状で,健診で発見される例が増加している.10 cm以上の巨大(図9-13-3)なものや多発性で肝腫大著明なPCLD(図9-13-4)では腹部膨満や右季肋部痛などを訴える場合がある.他覚所見として腹部膨隆を認める場合がある.
検査成績・画像所見
 血液生化学的には異常を示さない.超音波検査では境界明瞭な内部無エコーの像としてみられ,後方エコーの著明な増強を伴う.CTでは円形から楕円形のきわめて強い低吸収域として描出される.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像ではきわめて強い高信号を呈するため診断は容易である.
診断
 腹部超音波検査で辺縁平滑な類円形の無エコー領域で後方エコーの著明な増強が認められれば診断は容易である.鑑別診断上,重要となるのが囊胞性肝腫瘍である.囊胞性肝腫瘍は比較的まれな疾患であり画像所見において囊胞壁の一部に結節状あるいは乳頭状の充実性隆起が認められるが,その診断は困難な場合がある.
経過・予後
 予後は良好である.しかしながら徐々に増大する,あるいは症候性肝囊胞に対しては治療が必要である.PCLDの予後不良である.
治療
 無症状なら治療をせず年に1,2回の超音波検査あるいはCTをすすめる.腹部打撲などには注意を促す.腹部の圧迫感などの自覚症状がある場合には治療を行う.治療は,内容液を排除して縮小した囊胞内をエタノールもしくは塩酸ミノマイシンで洗浄して内皮細胞の分泌能を破壊する方法がある.この方法でも再発を起こす場合がある.最近では硬化薬(オレイン酸エタノールアミン:EO)を使用することにより劇的な効果があることが報告されるようになってきている.手術はほとんど行わないが,片葉に限局している場合には行う場合もある.PCLDに対しては肝切除,肝移植動脈塞栓療法(TAE),EO注入などが奏効する.[工藤正俊]
■文献
Kuntz E, Kuntz HD: Hepatology: Principles and Practice, Springer, Berlin, 2002.
Nakaoka R, Das K, et al: Percutaneous aspiration and ethanolamine oleate sclerotherapy for sustained resolution of symptomatic polycystic liver disease: an initial experience. AJR Am J Roentgenol, 193: 1540-1545, 2009.
Okuda K: Hepatobiliary Diseases: Pathophysiology and Imaging, Blackwell Science, London, 2001.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

家庭医学館 「肝嚢胞」の解説

かんのうほう【肝嚢胞】

 肝臓にできる袋状の腫瘤(しゅりゅう)で、成因によってつぎの2群に分類されます。
●寄生虫性肝嚢胞(きせいちゅうせいかんのうほう)
 肝包虫(かんぽうちゅう)(エキノコッカス)が肝臓に寄生してできます。
 ウシ、ウマ、ブタイヌキツネなどが人とともに肝包虫の中間宿主(ちゅうかんしゅくしゅ)となります。
 地方病で、四国、九州、東北、北海道にかぎられ、二次感染をおこすと、悪寒おかん)、発熱、上腹部痛などをともない、手術が必要となります。
●非寄生虫性肝嚢胞(ひきせいちゅうせいかんのうほう)
 ①血液および変性嚢胞、②皮様嚢胞(ひようのうほう)、③リンパ性嚢胞、④内皮性嚢胞(ないひせいのうほう)、⑤貯留性嚢胞(ちょりゅうせいのうほう)、⑥増殖性嚢胞(ぞうしょくせいのうほう)に分けられます。このうち⑥のみが腫瘍性(しゅようせい)です。
 多くの場合⑤であり、成因は胆管系の発生異常に基づくとされ、孤立性のものと多発性のものとがあります。
 症状は比較的乏しく、人間ドックなどの際に、CT検査や超音波検査で偶然発見されることが多い良性の疾患です。
 嚢胞内出血(のうほうないしゅっけつ)や嚢胞破裂(のうほうはれつ)などの合併症や、巨大嚢胞となって周辺臓器への圧迫症状などがなければ、手術は必要ありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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