肺炎クラミジア感染症

内科学 第10版 「肺炎クラミジア感染症」の解説

肺炎クラミジア感染症(クラミジア感染症)

概念・病因
 肺炎クラミジアC. pneumoniaeによる感染症である.ヒトを宿主とするC. pneumoniaeが,咳などの飛沫感染でヒト-ヒト伝播して,急性上気道炎,急性副鼻腔炎,急性気管支炎,また慢性閉塞性肺疾患(COPD)を主とする慢性呼吸器疾患の感染増悪,および肺炎を起こす.市中肺炎の約1割に関与するとされてきたが,近年では数%の関与にすぎない.発症年齢がマイコプラズマ肺炎と異なり,小児のみならず,高齢者にも多い.またほかの細菌との重複感染も少なくない.家族内感染や集団内流行もみられ,集団発生は小児のみならず高齢者施設でも報告されている.成人の半数以上が抗体陽性であり,一生のうちに数回は感染し,不顕性感染が多いことが指摘されている.動脈硬化性疾患への関与もいわれているが,直接的な原因というより,高血圧や脂質異常と同様,増悪因子と考えられる.
臨床症状
 潜伏期間は3~4週間と長く風邪症状で発症することが多い.上気道炎,気管支炎では乾性咳が主で,肺炎では喀痰を伴うこともある.38℃以上の高熱を呈する症例は多くなく,咽頭痛,鼻汁嗄声,呼吸困難などもあるが特異的な臨床所見に乏しい.遷延性の激しい咳を有する症例が比較的多い.小児や若年者では軽症の症例が多いが,高齢者や基礎疾患をもつ例ではときに重症例もみられる.
検査成績
 中等度のCRP上昇や赤沈亢進が認められることが多いが,上気道炎,気管支炎例では白血球増加はみられないことが多く,肺炎でも約半数にとどまる(非定型肺炎).胸部X線陰影分布は,主として中下肺野に多く,複数の部位に認めることもある.陰影の性状は軽症では間質性陰影が主体であるが,実質性陰影を呈するものもあり特徴的な所見はない.
診断
 通常,血清抗体価測定法が利用され,酵素免疫抗体法(ELISA法)による特異抗体測定キットが普及し利用されている.血清診断は原則ペア血清での有意な抗体価上昇で診断する.咽頭擦過材料などから,分離,抗原検出法,PCR法などで病原体検出が試みられるが一般的でない.
治療
 テトラサイクリン系やマクロライド系,ニューキノロン系抗菌薬が有効である.軽症例に対して通常は内服抗菌薬で十分効果が得られるが,肺炎で入院が必要な場合はテトラサイクリン系抗菌薬の点滴静注を行う.予後は通常良好であるが,高齢者や基礎疾患をもつ患者では重症化することもある.[安藤秀二]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「肺炎クラミジア感染症」の解説

肺炎クラミジア感染症
はいえんクラミジアかんせんしょう
Chlamydia pneumonia
(感染症)

どんな感染症か

 性器クラミジアやオウム病クラミジアとは別種の肺炎クラミジアが、(せき)によって飛沫感染し発症します。一生のうち一度はかかるほどありふれた感染症で、かぜから肺炎までの急性呼吸器感染症を起こします。

 通常は軽症で、小児と高齢者にとくに多い傾向があります。接触が密接な人の間で小規模にゆるやかに広がり、時に集団発生も起こします。

症状の現れ方

 潜伏期間は3~4週間で、しつこく長引く空咳が主体で、ほかにのどの痛み、鼻汁などがみられますが、38℃以上の高熱を示す症例は少なく、比較的軽症です。ただし、高齢者や基礎疾患がある場合は重症化することもあります。

検査と診断

 特異的な診断法としては、咽頭から菌の検出を行いますが、通常は血清中の抗体を証明する抗体価測定法が利用されます。

治療・予防の方法

 有効な抗菌薬を2週間ほど服用します。中等度以上の肺炎で入院が必要な場合は抗菌薬の点滴静注をしますが、予後は通常良好です。マスク、手洗いなどはある程度有効です。

病気に気づいたらどうする

 早期に受診し、検査と治療を受けます。家族や身近な人に同様の症状がある場合は、家族内感染や流行が疑われるので受診することをすすめます。

岸本 寿男

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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