喀痰(読み)かくたん

日本大百科全書(ニッポニカ)「喀痰」の解説

喀痰
かくたん

一般に気道とよばれる呼吸器系、すなわち口腔(こうくう)、鼻腔、咽喉頭(いんこうとう)腔、気管、気管支、肺胞などの粘膜からの分泌物の総称で、通常、(せき)などにより体外に出され、とよばれる。喀痰には、細菌、塵埃(じんあい)、種々の細胞などが混入されていることが多く、気道あるいは肺の病変を反映するので、呼吸器疾患の場合、喀痰の検査は不可欠である。性状によって、漿液(しょうえき)性、粘液性、膿(のう)性、泡沫(ほうまつ)性などに分類される。粘液性のものは分泌物の粘稠(ねんちゅう)度(粘り気)の増加ばかりでなく、気道閉塞(へいそく)症状に関係して、痰のいわゆる切れにくさの原因となる。黄色膿性のものは細菌感染を示し、肺化膿症では腐敗菌の感染により悪臭を放つ。喀痰の細菌検査の際、できるだけ唾液(だえき)などの混在を避けても、口腔内に常在する細菌が混入するため病原性の確認は困難なこともあるが、大量の同一菌を再度にわたり検出すれば、診断上意味があるばかりでなく、その菌の化学療法薬剤の感受性、耐性を検査することが可能で、治療上も有意義である。

 肺結核症の診断には、痰の結核菌の検出が重要で、塗抹(とまつ)、染色標本による顕微鏡的検査および培養検査が行われている。塗抹染色標本による結核菌の検出程度は、ガフキーGaffkyの分類によって表現される。患者の喀痰中に結核菌が認められる場合には開放性結核とよばれ、結核蔓延(まんえん)の原因となるため、社会的、公衆衛生学的に重視されている。喀痰中の細菌、真菌、寄生虫卵、ウイルスなどの検査のほか、痰の中に含まれる各種の細胞の検査も、細胞診とよばれ、臨床検査学の重要な分野である。細胞中に白血球のうち、好中球の滲出(しんしゅつ)が著明であれば化膿性疾患を、好酸球が著明であればアレルギー疾患の証明となり、血鉄素(ヘモジデリン)を含有した食細胞があれば肺うっ血を証明することとなる。とくに肺癌(がん)検索のために行われる喀痰中の癌細胞の検出は、今日広く行われている細胞診の代表的な例である。

[渡辺 裕]

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精選版 日本国語大辞典「喀痰」の解説

かく‐たん【喀痰】

〘名〙 咳(せき)とともに吐き出される気道の分泌物。口腔、咽頭腔からの分泌物も含まれることがある。肺水腫、気管支拡張症、肺膿瘍などの場合にとくに多くみられる。〔医語類聚(1872)〕
※星座(1922)〈有島武郎〉「喀痰の中に新鮮な血の交ったのがいくつも出て来る」

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デジタル大辞泉「喀痰」の解説

かく‐たん【××痰】

[名](スル)痰を吐くこと。また、吐いた痰。

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普及版 字通「喀痰」の解説

【喀痰】かくたん

痰をはく。

字通「喀」の項目を見る

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百科事典マイペディア「喀痰」の解説

喀痰【かくたん】

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世界大百科事典内の喀痰の言及

【痰】より

…気道から吐き出される粘稠性のある液状物質で,喀痰(かくたん)ともいう。そのおもな成分は気管や気管支の粘膜からの分泌液であるが,これに炎症や鬱血(うつけつ)などによる種々の細胞を含んだ滲出液や,外部から侵入した細菌や塵埃(じんあい)などの異物と吐き出す際に加わる唾液が混じっている。…

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