ことわざを知る辞典 「背に腹は代えられない」の解説
背に腹は代えられない
[使用例] そのなかには、あたしのものばかりじゃァない、女房が仕立てもので、よそからあずかっていたよその反物もあったんですよ。でも背に腹ァかえられない。思いがけない十円で、米を買ったり、酒を買ったりしました[古今亭志ん生*びんぼう自慢|1964]
[使用例] 今のところ熱が高くなれば、痙攣などを防ぐためにやむを得ず解熱剤を使うほかはない。しかし、あくまで背に腹はかえられないから用いるものである。薬を計る手は、毒物を計るように慎重であらねばならないと自戒する[森田功*やぶ医者の一言|1995]
[解説] よく使われる表現で、比喩的な意味も用法もよく知られています。しかし、なぜ、「背」と「腹」を比喩にするのか、あらためて考えると、どうもよくわからないところがあります。人は攻撃されると本能的に背をまるめ、腹部をかばいます。その背景には、内臓に近く傷つけられると命にかかわる「腹」と、背骨や肋骨で守られ、少々の打撲や傷に耐えられる「背」の違いがあります。また、「腹」が食べることを象徴するのに対し、「背」は姿勢や誇りを象徴することも関係しているでしょう。明確な立証は困難ですが、かつては身体の部位による比喩表現が、現代人には考えられないほど大きな説得力を発揮していたようです。
〔英語〕Needs must when the devil drives.(悪魔に駆り立てられたら是非もない)
〔中国〕吃菩薩、着菩薩、灶里無柴、焼菩薩(菩薩のおかげで食べたり衣服を着ていても、竈に薪がなくなると菩薩を焚く)
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