通常は人間の生理的・物理的部分をいう。しかし身体は、人間のもつ心的側面を担う部分としての「心」と相関的に、生理的・物理的側面を担うものと考えられた。したがって歴史的にも身体の性格づけは、心をどうとらえるか、またそれが心とどのような関係をもつかで定まる。たとえば心を個人的霊魂と考え、身体をその「容(い)れ物」とする場合でも、心の自由さを奪う檻(おり)であることが強調されるときと、心の意図したことを行為によって実現する道具としての役割が強調されるときとがある。また心を「わたし」あるいは主観ととらえる近世哲学においても、主観を行為するものと考えるほど、身体はその活動を保証する積極的意味合いが強くなるが、反面、主観の観照性(行為せずにただ見聞きする「わたし」としての性格)が重視されるほど、身体は主観の制約性(主として特定視点からしか見聞きできぬ点)としての消極的意味合いが強まる。なお、それらの一般的傾向の極端には、身体は心の産物であるとする唯心論や、逆に、身体(脳など)の働きとして心が存在すると主張する唯物論がある。
[伊藤笏康]
『プラトン著、藤沢令夫訳『パイドロス』(岩波文庫)』▽『デカルト著、桂寿一訳『哲学原理』(岩波文庫)』▽『カント著、篠田英雄訳『実践理性批判』(岩波文庫)』▽『メルロ・ポンティ著、竹内芳郎・小木貞孝他訳『知覚の現象学I』(1967・みすず書房)』
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…しかし,体には広狭2種の意味合いがある。広義では生物体とほぼ同義であり,狭義ではヒトを中心とする高等動物の身体をさす。広義で,生物体としての体は,単細胞と多細胞,植物と動物とをとわず,すべての生物個体の物質的実体である。…
… 以上のような区分,分別に対して,コミュニケーションをその手段により分類して,より解釈的にとらえることができる。この場合は,非言語的non‐verbalコミュニケーションと言語的verbalコミュニケーションの二つにまず大別し,さらに前者は表情,身ぶりなどの身体的記号を用いるものから,ものによる象徴,さらには音楽,図像などの複雑な象徴の結合を含むものまで,さまざまな段階に分類することができる。後者も,音声によるものと,文字や図式という複雑な記号体系を用いるものとに分けられ,さらにさまざまな媒体による分類が可能である。…
※「身体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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