日本大百科全書(ニッポニカ) 「脇尊者」の意味・わかりやすい解説
脇尊者
きょうそんじゃ
2世紀ごろのインドの仏教の学僧。サンスクリット名はパールシュバPārśvaといい、「脇(わき)」の意味。「尊者」は尊称である。中インドまたは北インドの出身。仏教の有力な部派である説一切有部(せついっさいうぶ)の代表的論書『大毘婆沙論(だいびばしゃろん)』の編纂(へんさん)に中心的役割を果たしたといわれ、この論書のところどころに彼の説が伝えられている。出家したのが老年であったため、悟りを得るまでは脇をつけない(横にならない)という誓いをたてて修行に励み、3年で阿羅漢(あらかん)の悟りに達したので、この名を得たという。後の禅宗では伝法の第十祖として尊崇する。
[藤田宏達 2016年11月18日]