脊柱靱帯骨化症

内科学 第10版 「脊柱靱帯骨化症」の解説

脊柱靱帯骨化症(脊椎脊髄疾患)

定義・概念
 脊柱靱帯骨化症とは,脊椎を支持する靱帯のうち椎体の後方にある後縦靱帯(posterior longitudinal ligament)や上下の椎弓を支持する黄色靱帯(yellow ligament, ligamentum flavum)が骨化し肥厚して,脊柱管を狭窄することにより脊髄,神経根を圧迫して神経症候を呈する病態である.後縦靱帯骨化症(ossification of yellow ligament:OYL)は頸椎に多く,黄色靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament:OPLL)は中下位胸椎に多い.
疫学
 日本人は欧米人と比較して脊柱靱帯の骨化の頻度が高い.女性よりも男性に約2倍多く,50歳代の発症が多い.
臨床症状
1)頸椎後縦靱帯骨化症:
誘因なく発症することが多いが,転倒や頭部外傷契機に急性に脊髄症を起こすこともある.上肢のしびれ感で初発することが多く,進行すると下肢の感覚障害,痙性麻痺となる.
2)胸椎黄色靱帯骨化症:
下肢の運動感覚障害が緩徐進行性に起きる.中位胸椎の病変の場合は痙性対麻痺が主症候になる.T11/12椎間では大腿四頭筋の筋萎縮,T12/L1椎間では下腿の筋萎縮を呈して弛緩性両下肢麻痺となることがある.
検査成績
 画像診断では,靱帯骨化は単純X線,CT画像で高吸収となり,MRIでは低信号となる.MRIでは脊髄圧迫の程度を評価できる(図15-18-5).
経過・予後
 無症状の段階で見つかった場合,その後症状が発現する比率は20%程度である.すでに脊髄症が発現している場合には,半数程度は進行性の経過をとる.
治療・予防・リハビリテーション
 中等度以上の脊髄障害がある場合には,手術的治療を考慮する必要がある.[安藤哲朗]
■文献
日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,頸椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン策定委員会編:頸椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン2011,改訂第2版,pp1-63,南江堂,東京,2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報