大学事典 「自己投資」の解説
自己投資
じことうし
investments for oneself
自らの資金や時間などを自己啓発のために用いること。不安定で変化が急速な社会においては,さまざまな変化に柔軟に対応し新たなことにチャレンジできる能力を開発するための自己投資が促されている。2012年度に大学や専門学校で学んだ社会人は約12万人であった。大学等で学び直すことでキャリアアップを図る人がいる一方で,将来に不安を抱きながらも,自己投資の意欲や機会を失っている人もいる。情報不足,動機不足,時間不足,経済的制約が学習の潜在的な障害となる。とくに就職後3年以内に離職した若者,リストラなどで再就職の機会を得られない中高年,子育てなどで就業を中断した女性,就学や就労の場にいないニートなどは自己啓発の機会を捉え難い。その格差を是正するためには,教育・労働・福祉の関係機関の連携が不可欠であり,誰もが「学び直し」や「再チャレンジ」ができる機会の充実が図られなければならない。また,自己投資から得られる経済的利益や社会的報酬を明らかにするとともに,すでに多くの国で導入されている学習歴の認定の検討が求められる。
著者: 中村香
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報