翻訳|neat
「仕事につかず、就学もしていないし、就労のための訓練も受けていない人」Not in Employment, Education or Trainingの略称。これは1990年代末にイギリスで生まれた造語である。ニートに近いことばとしてフリーターがあるが、フリーターの場合、就労の意思はあるが、自分の希望する進路と違う等、ほかにしたいことがあってフルタイムの仕事をしない状況を意味する。それに対し、ニートは、就労や就学、職業訓練など、社会制度にきちんと組み込まれるのを回避する心的な状況をさす。
内閣府は、2005年(平成17)の調査で、全国でニートが85万人、これは、1995年の67万人より27%増加したと試算している。ニートは、失業者数のような実態がなく、心的な状況を問題にするので、数の推定には幅がみられるが、第一生命経済研究所は、ニート数は2000年の75万人から05年の87万人に増加し、10年には98万に達するとの推定値を発表している。この推定値どおりにニート層が増加していけば、少子化の進行も加わった形で就業者数が減少し、日本社会全体の生産力が低下する可能性が高まることが懸念される。
これまで多くの青少年は、しかるべき学歴を取得して、できるかぎり条件のよい職業につくのを目ざしてきた。そして、伝統的に教育はそうした人材淘汰(とうた)的な機能を果たしてきた。しかし、現在の青少年の間には、自分に向いた職種を選択しようという傾向が強く、自分らしさをなくしてまで就職しようとはしない。
そうした自分中心的な態度は一種の甘えであろう。しかしこの背景には、現在の青少年は少子化社会のなかで育ち、競争を経験していないことも影響している。高校はむろん、大学も、進学先へのこだわりをもたなければ、どこへでも入学できる。また、1990年代からの不況により、たとえ大手の企業に入社できたとしても、倒産もあれば、リストラもある、といった企業を取り巻く環境の不安定化も、「自分らしく」生きたいと願う考えに影響を与えている。
このように現在の青少年は、社会的な達成と距離を置いた成長をたどっているので、今後もニート的な生き方をする者が増加すると考えられる。もちろん、「自分らしく」といっても、主体性の程度によって、積極的に個性的な生き方を求めるタイプ、あるいは、社会に飛び込む勇気をもてないまま漂っているタイプ、さらに、単に社会との接触を避け自分の世界に引きこもるタイプなど、いくつかの型が予想される。
現在の青少年は、電子メディアに囲まれて育ち、インターネットなど、バーチャルな世界に身を置いている者が多い。したがって、全体としてみると、社会的な引きこもり状況のニートが増加する可能性が高い。それだけに引きこもりがちな青少年に、社会との接点をいかに保たせるか。ニートの問題は、小手先の対応で、問題が解決するとは思われない。社会と絆(きずな)をもった青少年をどうすれば育成できるのか。ニートの存在は、青少年の成長のスタイルという大きな課題を投げかけているように思われる。
[深谷昌志]
『本田由紀著『若者と仕事』(2005・東京大学出版会)』▽『鈴木謙介著『カーニヴァル化する社会』(講談社現代新書)』
日常生活での運動によって発生する熱量。エネルギーの消費を知ることができる。非運動性熱産生あるいは非運動性活動熱産生を意味するnon-exercise activity thermogenesisの頭文字をとったもので、NEATとも表記する。身体を鍛えることを目的とする運動とは異なり、家事や通勤・通学のための移動など、毎日の生活活動における運動(非運動性身体活動)によって産生される熱量を表し、キロカロリーによって表示する。日常生活のなかで、立って行動する、歩く時間を増やすなどを意識して行うことにより、ニートを高めてエネルギー代謝を向上させ、肥満などの生活習慣病を予防することができる。具体的には、家においてできるだけ立った状態(立位)で動く、食物はよくかんで食べる、外出先でエスカレーターを使わず階段を上り下りする、一定以上の距離を毎日散歩するなどを心がけることにより、積極的にエネルギー消費を増やし、肥満に限らず高血圧や糖尿病などの予防、さらには寝たきりの予防にもつなげることができる。肥満者の日常生活において、座位でいる(座っている)時間が非肥満者に比べて圧倒的に多いという研究結果も報告されている。
[編集部 2016年6月20日]
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(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2008年)
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