自然主義演劇(読み)しぜんしゅぎえんげき(その他表記)Le théâtre naturaliste

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自然主義演劇」の意味・わかりやすい解説

自然主義演劇
しぜんしゅぎえんげき
Le théâtre naturaliste

哲学,文学,自然科学などにおける即物的実証的世界観,人生観を,その様式や主題に取入れた演劇。特に 19世紀末にゾラが演劇における自然主義を提唱し,その小説『テレーズ・ラカン』が脚色上演されたのをはじめ,H.F.ベック,イプセンストリンドベリハウプトマン,ゴールズワージーらが自然主義的な戯曲傑作を残した。舞台においても,フランスの A.アントアーヌをはじめとして,舞台装置や衣装に実物を用い,観客との境に第四の壁を想定して俳優が観客を意識することを禁じ,人生の断片を再現しようとした。また,スタニスラフスキーによるゴーリキーの『どん底』上演 (1902) では世界的に注目を集めた。元来虚構の芸術である演劇では徹底した自然主義は不可能であるが,便宜的な約束事や無意味な誇張を排して演劇に真実性を与える効果はあった。

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世界大百科事典(旧版)内の自然主義演劇の言及

【近代劇】より

…問題意識の浅さや散文台詞の堅さはあっても,これをもって本来の〈近代劇〉の始まりとしてよい。彼らの直接の延長上にゾラの提唱した自然主義演劇も成立するし,彼らを高く評価したノルウェーの作家B.ビョルンソンやデンマークの批評家G.ブランデスの示唆によってイプセンの社会問題劇も成立する。だが〈近代劇〉にいたるもう一つの重要な過程はロシア演劇の流れである。…

※「自然主義演劇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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