自縄自縛電子(読み)ジジョウジバクデンシ

化学辞典 第2版 「自縄自縛電子」の解説

自縄自縛電子
ジジョウジバクデンシ
self trapped electron

イオン結晶中の自由電子が,自分自身のつくったポテンシャルの場に捕えられたもの.イオン結晶中の自由電子がある場所に一時的に静止したとすると,電子のもつ電荷のため,周囲の格子点にある正・負イオンは正常の位置から変位し結晶媒質は偏極する.この偏極作用によって電子の位置に有効なポテンシャルの孔が生じ,電子はこれに捕えられると考えられる.自縄自縛電子の実験的な確証はないが,水の放射線分解水中に生じる水和電子は,これに似た性質のものと考えられる.自縄自縛正孔については,ハロゲン化アルカリと塩化銀の結晶において,その存在が確かめられている.前者では Vk 中心として,後者では Ag に捕えられて Ag2+ の形として安定化されたものである.この場合,正孔を捕らえる作用は偏極以外の格子のひずみによるものが大きな役割をなしていると考えられる.また,自縄自縛励起子もあるが,これは緩和した状態の励起子のことである.[別用語参照]基礎吸収V中心

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報