日本大百科全書(ニッポニカ) 「臭鼻症」の意味・わかりやすい解説
臭鼻症
しゅうびしょう
悪臭を伴う萎縮(いしゅく)性鼻炎で、鼻粘膜および鼻甲介の骨質が萎縮して鼻腔(びくう)が非常に広くなり、灰黄色の厚い痂皮(かひ)(かさぶた)が粘膜の上に付着し、嫌な悪臭を発する。鼻の梅毒や結核でもよく似た症状を呈することがあるが、臭鼻症では梅毒や結核とは異なり、潰瘍(かいよう)や壊死(えし)を伴うことがないのが特徴の一つでもある。統計的には10歳代で発病することがもっとも多く、40歳以降で初発することは非常に少ない。比較的女性に多い。
原因については多くの説がある。すなわち、遺伝、体質、ビタミン(とくにA、C、Dなど)の欠乏、内分泌障害、細菌感染、自律神経障害、免疫異常などが関係するという。シェーグレン症候群の一分症としておこることもある。しかし、決定的な原因はまだ明らかではなく、これらの因子が重複して発病するという考えもある。したがって、治療についても絶対的なものはなく、保存的対症療法が主で、鼻腔内を清潔にして低下した粘膜機能の回復を図るのがよいとされている。ときには鼻腔を狭くするために手術を行うこともある。
[河村正三]