改訂新版 世界大百科事典 「萎縮性鼻炎」の意味・わかりやすい解説
萎縮性鼻炎 (いしゅくせいびえん)
atrophic rhinitis
鼻粘膜とその内側にある鼻骨が萎縮してしまう慢性疾患。鼻粘膜の鼻汁産生組織も萎縮するため鼻内は乾燥し,少量の鼻汁が汚黄色のかさぶたのように変化して鼻粘膜を広く覆う。しばしば悪臭を発するが,このような状態を臭鼻症ozenaという。かさぶたの量が多くなると,患者は鼻閉(鼻づまり)を自覚するようになる。鼻は呼吸器の入口にあり,吸気に適度な湿度と温度を与えてこれを肺でのガス交換に適したものに変える働きをしているが,萎縮性鼻炎の場合この重要な機能は完全に失われる。原因は不明。特別な治療法もない。鼻内局所の清浄化に努めながら血管拡張剤などを使用する。女性ホルモンのエストロゲンスプレーが効を奏するともいわれている。
執筆者:寺尾 彬
家畜の萎縮性鼻炎
家畜の場合は豚伝染性萎縮性鼻炎のことを指し,気管支敗血症菌Bordetella bronchisepticaの感染によって起こるブタの鼻粘膜の慢性の炎症であることが近年わかった。病勢が進むにつれて鼻甲介骨および上顎骨が萎縮し,その後遺症としていわゆる鼻曲りを示す。伝播は病豚または保菌豚の鼻汁の飛沫または直接,間接の接触による。罹病率は高いが致死率は低い。サルファ剤,カナマイシン,テトラサイクリンで予防が可能で,ワクチンも開発されている。
執筆者:本好 茂一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報