改訂新版 世界大百科事典 「船所」の意味・わかりやすい解説
船所 (ふなしょ)
平安後期から鎌倉時代にかけての国衙在庁機構〈所(ところ)〉の一つ。〈ふなどころ〉ともいう。船舶の調査・登録・徴用,水主(かこ)の差発を行い,官物や封物の運上,宇佐使・伊勢使などの勅使や官使の逓送,院の御幸などにあたった。戦時には軍船の徴用も行う。具体例は乏しく,1185年(文治1)周防在庁〈船所五郎正利〉が当国船奉行として源義経の壇ノ浦攻略に数十艘の船を提供したこと,1203年(建仁3)紀伊〈船所書生幷梶取〉が後鳥羽院の熊野御幸渡船料と号して諸国運上物を載せた河船を切り損じたことがみえ,また安芸・隠岐に船所の存在が確認される。なお周防国衙跡に船所の字名が残る。史料上にみえる職員として船・水主を調査注進する記録事務を担当したと思われる書生,徴用した船に乗り水主を指揮する国衙直属の船頭である梶取(かじとり)がある。梶取には免田が与えられていた。これらの下級職員を統轄したのは,他の〈所〉と同じく目代・検校・(惣大)判官代などの在庁官人であったと思われる。
執筆者:下向井 龍彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報