芦ノ湯温泉(読み)あしのゆおんせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「芦ノ湯温泉」の意味・わかりやすい解説

芦ノ湯温泉
あしのゆおんせん

神奈川県箱根町にある温泉。芦之湯温泉とも。箱根火山の新期外輪山のカルデラ壁(標高860メートル)に湧出(ゆうしゅつ)し、箱根でも高所の温泉。芦ノ湖に近く、またアシが生える沼(現存)がそばにあることなどが温泉名のおこり。江戸時代中期選定の箱根七湯の一つである。泉質硫黄(いおう)泉で、古来、医療効果が最良とされる。古くから箱根権現(ごんげん)(箱根神社)の行場(ぎょうば)(修験道(しゅげんどう)の道場)で、その境内に入れられていた。江戸後期から漢学者、芸術家らの湯治場とされていたが、明治になって東海道(国道1号)がここを通って急速に開けた。JR小田原または小田急線箱根湯本からバス便がある。付近に元箱根石仏群(通称曽我(そが)兄弟、虎(とら)御前の墓といわれる五輪塔、二十五菩薩(ぼさつ)像、多田満仲(みつなか)墓、六道(ろくどう)地蔵)があり、すべて鎌倉時代の作で、当時の地蔵信仰を物語り、国の史跡に指定されている。また、1954年(昭和29)箱根町と合併した旧芦之湯村は、全国最小の行政村として知られていた。

[浅香幸雄]


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