日本大百科全書(ニッポニカ) 「芦ノ湖」の意味・わかりやすい解説
芦ノ湖
あしのこ
神奈川県南西部、箱根町にある湖。富士箱根伊豆国立公園に含まれ、箱根景勝の中心ともいえる。箱根火山の火口原湖で、ひょうたん形をし、南のほうが広くなっている。周囲18キロメートル、面積6.8平方キロメートル、最大深度40.6メートル、水面の標高725メートル。水は薄藍(うすあい)色で、透明度は以前は大きかったが、近年は観光開発の進んでいる元箱根付近ではしだいに小さくなってきている。芦ノ湖から眺める富士山は日本一の景勝といわれる。古来、箱根権現(ごんげん)(箱根神社)の御手洗(みたらし)池とされ、祭礼をはじめ諸行事にあたっての潔斎の場とされ、境内の一部にもなっていた。1666~1670年(寛文6~10)には湖尻峠の下に深良(ふから)用水(箱根用水。トンネルの長さ1.3キロメートル)が掘られ、これを通じて外輪山の西斜面(黄瀬(きせ)川流域)へ灌漑(かんがい)用水が送られることになった。以後芦ノ湖の水利権は静岡県側の水利組合に属し、地元箱根町の湖水の自由利用は規制されたままで、水利権者と地元との湖水利用の調整が課題となっている。1925年(大正14)湖水に放流された北アメリカ原産のブラックバスはここの名物となり、ヘラブナやヤマベ、ニジマスなどの釣りも楽しめる。箱根―元箱根―箱根園―湖尻間には定期遊覧船が通う。
[浅香幸雄]