莞島沖海底沈没船(読み)わんとうおきかいていちんぼつせん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「莞島沖海底沈没船」の意味・わかりやすい解説

莞島沖海底沈没船
わんとうおきかいていちんぼつせん

1983年 12月,韓国全羅南道南部,莞島郡と長興郡の境界付近に当たる老力島南方海上の水深 10m前後の泥海底より,潜水夫が高麗青磁4点を引き揚げたのをきっかけに沈没船の存在が知られた。国立文化財研究所を中心に 83~84年に4次にわたる調査が行なわれ,その結果4万点余りの高麗青磁が引き揚げられたほか,船体の状況もほぼ明らかになった。沈没船は構造が慶州の雁鴨池発見の統一新羅時代の小型船に類似し,朝鮮半島内で建造されたと考えられる。高麗青磁のうちには鉄砂梅花紋壺・鉄砂牡丹文青磁長鼓胴・鉄砂牡丹文細口壺など優品を含むが,これらは共伴した青銅の箸 (はし) ・匙 (さじ) ・杓子 (しゃくし) ・釜が雁鴨池出土の統一新羅時代のものと近似しており,高麗時代初期の 11世紀代のものと推定。従来,鉄砂牡丹文青磁は高麗青磁の衰退する 13~14世紀の製作とされていたが,今回の発見で 11世紀に既に出現していることが判明した。本船は全羅南道道康津付近の窯で生産された陶磁器を沿岸諸地域へ運搬する途中,沈没した交易船であると推定されている。

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