改訂新版 世界大百科事典 「蔵前相場」の意味・わかりやすい解説
蔵前相場 (くらまえそうば)
江戸幕府の蔵米を売却するときに立てられた相場。主として江戸浅草の幕府米倉(浅草御蔵)の払米値段を指し,御蔵相場,庭相場とも呼ばれた。100俵(35石)を基準に金価格で示される。幕府蔵米のほか,旗本御家人の蔵米取の支給米を貨幣化するにもこれが用いられた。入札は庭払いといって御蔵庭でなされ,値段を引き立てるため市中米問屋,仲買に広く参加を呼びかける,入札触れが前もって出された。しかし蔵前の札差株仲間や系列下の米屋仲間が入札を独占するため一般の米相場より著しく安値となる傾向があり,1743年(寛保3)幕府は厳しく札差を取り締まった。蔵前相場は江戸市中への卸値であるが,天明大飢饉の1787年(天明7)には100俵197両(1両で1斗8升=32.4lに相当)に達している。なお,旗本御家人が蔵米を支給されるごとに,この相場を通じてなにほどの手取金を得られるかの計算法を御蔵前割といい,入札する米商の必要な知識であった。
執筆者:北原 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報