蔵米(読み)クラマイ

デジタル大辞泉 「蔵米」の意味・読み・例文・類語

くら‐まい【蔵米】

江戸時代幕府諸藩米蔵収納された米。
江戸時代、幕臣・藩士らに支給された俸禄米切米きりまい
江戸時代、諸藩の蔵屋敷から藩の財政資金として払い出された米。

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精選版 日本国語大辞典 「蔵米」の意味・読み・例文・類語

くら‐まい【蔵米】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 豊臣政権江戸幕府および諸藩の蔵入地(直轄領)から年貢として納入され、その蔵に貯えられた米。蔵入米。城米。
    1. [初出の実例]「其方手前御蔵米事」(出典:下川文書‐(年未詳)(16C後)五月一七日・豊臣秀吉朱印状写)
  3. 江戸幕府および諸藩が家臣の俸祿として支給した貯蔵米。切米
    1. [初出の実例]「御倉米にて切米凡二十七万六千三百七十四石五斗」(出典:随筆・筱舎漫筆(1841頃か)七)
  4. 江戸時代、諸藩の蔵屋敷を通じて商品化される米。主として、大坂で売り、藩の財政資金とした。
    1. [初出の実例]「当年は御蔵米過分に御座候。上方へ御のほせ候ても、ね樫与無之候間」(出典:梅津政景日記‐元和三年(1617)一二月二九日)

かくし‐まい【蔵米】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、米価の値上がりを見込んで米商人などが隠匿しておく米。
    1. [初出の実例]「此上右躰之高直〆売蔵米等致候はば、糺之上、厳科にも可被処候」(出典:徳川禁令考‐前集・第六・巻五七・天明七年(1787)一一月)

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改訂新版 世界大百科事典 「蔵米」の意味・わかりやすい解説

蔵米 (くらまい)

(1)江戸時代,諸藩の蔵屋敷を通じて商品化される米穀。これにたいし蔵屋敷を経由しないで,商人の手によって商品化されるものは納屋米(なやまい)という。各藩で収納された年貢米は,国元において藩主の御用や家臣の俸禄米として支出されたり,城下町で一部払米(はらいまい)されるほかは,大坂や江戸にある藩の蔵屋敷へ蔵米として回送され,そこで藩役人の蔵元もしくは町人蔵元によって販売され,代金は藩の財政収入となった。財政窮乏に悩む諸藩は,できるだけ蔵米を増加させることによって貨幣収入の増大を図ろうとした。大坂の場合,蔵屋敷の蔵米は米仲買株をもつ蔵米問屋が入札を行い,落札した商人は代銀を納めて蔵屋敷から米切手を受け取り,さらにこの切手を買い取った搗米屋(つきごめや)が蔵屋敷から現米を引き取って,払下げが完了した。以上の正米(しようまい)取引のほかに,享保(1716-36)以降になると,回送中の蔵米や,翌年入荷するであろう蔵米を担保として,先物取引の一種である張合米取引も行われ,諸藩の資金調達を可能にした。大坂の蔵米入津高は,享保初年の調査によれば,1年間に広島米・備前米など中国地方から30万~32万石,筑前米・肥後米など九州地方から28万~32万石,加賀米・越後米など北陸地方から15万~16万石,伊予米・讃岐米など四国地方から9万~11万石,合計82万~91万石にのぼっている。これにたいし,この時期の納屋米の入津高は20万~30万石であった。

(2)江戸時代,給地をもたない武士にたいして主君から支給される俸禄米のこと。切米(きりまい)に同じ。知行地を与えられた武士を知行取というのにたいし,知行地をもたず,領主直轄地から収納される年貢米を蔵米として給せられる武士を蔵米取家禄)と呼んだ。
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百科事典マイペディア 「蔵米」の意味・わかりやすい解説

蔵米【くらまい】

(1)切米とも。江戸時代幕藩領主の蔵に年貢として納められた米。特に幕府が江戸浅草御蔵に収納,旗本御家人に支給した米をいい,蔵米で封禄を受ける武士を知行取に対して蔵米取という。(2)諸藩の蔵屋敷を通じて商品化された米。これに対して直接商人の手によって商品化された米は納屋米(なやまい)とよぶ。
→関連項目廻米家禄蔵前相場米切手地方知行地方直し払米札差扶持淀屋辰五郎

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蔵米」の意味・わかりやすい解説

蔵米
くらまい

江戸時代、幕府・諸藩が直轄の倉庫に収納した年貢米。幕府の年貢米は各地の代官所の米倉にいったん納められたのち、江戸・大坂などの大規模な蔵に集積され、財政上の必要に応じ売却された。諸藩の場合も城内の米倉や大坂・江戸の蔵屋敷に運ばれた。蔵米の一部は家臣団への俸禄(ほうろく)として支給されたが、地方知行(じかたちぎょう)・地方渡しに対して蔵米知行・蔵前渡しと称し、受給する武士を蔵米知行・蔵米取といった。また蔵屋敷から市中に販売される蔵米は、一般に米問屋の入札によって払い下げられたが、落札者が蔵役人より受け取る証文を蔵米切手といい、信用の厚い有価証券としてそれ自体通用した。

[北原 進]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「蔵米」の解説

蔵米
くらまい

1江戸時代,諸藩の蔵屋敷に廻送・販売された米穀。各藩は収納した年貢米を大坂や江戸の蔵屋敷へ搬送,売却・換金して財政収入としていた。そのため,財政がいきづまっていた各藩は蔵米をふやし,貨幣収入の増大につとめた。大坂への入津量は年間約350万俵,蔵屋敷をへず商人によって商品化した納屋米の約4倍であった。

2切米(きりまい)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蔵米」の意味・わかりやすい解説

蔵米
くらまい

(1) 切米ともいい,幕府および大名の家臣で「知行」によらず領主の米蔵から現米もしくは米切手で俸禄を受ける場合,その米をいう。 (2) 諸大名が蔵屋敷に蔵物として回送する米。同じく商品であるが商人が回送する納屋米 (なやまい) とは区別されていた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「蔵米」の解説

蔵米
くらまい

江戸時代,幕府の御蔵や大名の蔵屋敷に運ばれ売りさばかれた貢納米
その一部は家臣の俸給として支給され,切米とも呼ばれた。またほかの国産物をあわせて蔵物という。

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世界大百科事典(旧版)内の蔵米の言及

【切米】より

…江戸時代,給地を持たない武士に主君が支給する俸禄米のこと。蔵米ともいう。江戸幕府においては,直属の家臣(旗本,御家人)のうちに,知行地を与えられた知行取と,知行地をもたない蔵米取がいたが,後者に与えられたものが切米である。…

※「蔵米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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