(1)江戸時代,諸藩の蔵屋敷を通じて商品化される米穀。これにたいし蔵屋敷を経由しないで,商人の手によって商品化されるものは納屋米(なやまい)という。各藩で収納された年貢米は,国元において藩主の御用や家臣の俸禄米として支出されたり,城下町で一部払米(はらいまい)されるほかは,大坂や江戸にある藩の蔵屋敷へ蔵米として回送され,そこで藩役人の蔵元もしくは町人蔵元によって販売され,代金は藩の財政収入となった。財政窮乏に悩む諸藩は,できるだけ蔵米を増加させることによって貨幣収入の増大を図ろうとした。大坂の場合,蔵屋敷の蔵米は米仲買株をもつ蔵米問屋が入札を行い,落札した商人は代銀を納めて蔵屋敷から米切手を受け取り,さらにこの切手を買い取った搗米屋(つきごめや)が蔵屋敷から現米を引き取って,払下げが完了した。以上の正米(しようまい)取引のほかに,享保(1716-36)以降になると,回送中の蔵米や,翌年入荷するであろう蔵米を担保として,先物取引の一種である張合米取引も行われ,諸藩の資金調達を可能にした。大坂の蔵米入津高は,享保初年の調査によれば,1年間に広島米・備前米など中国地方から30万~32万石,筑前米・肥後米など九州地方から28万~32万石,加賀米・越後米など北陸地方から15万~16万石,伊予米・讃岐米など四国地方から9万~11万石,合計82万~91万石にのぼっている。これにたいし,この時期の納屋米の入津高は20万~30万石であった。
(2)江戸時代,給地をもたない武士にたいして主君から支給される俸禄米のこと。切米(きりまい)に同じ。知行地を与えられた武士を知行取というのにたいし,知行地をもたず,領主直轄地から収納される年貢米を蔵米として給せられる武士を蔵米取(家禄)と呼んだ。
執筆者:大口 勇次郎
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江戸時代、幕府・諸藩が直轄の倉庫に収納した年貢米。幕府の年貢米は各地の代官所の米倉にいったん納められたのち、江戸・大坂などの大規模な蔵に集積され、財政上の必要に応じ売却された。諸藩の場合も城内の米倉や大坂・江戸の蔵屋敷に運ばれた。蔵米の一部は家臣団への俸禄(ほうろく)として支給されたが、地方知行(じかたちぎょう)・地方渡しに対して蔵米知行・蔵前渡しと称し、受給する武士を蔵米知行・蔵米取といった。また蔵屋敷から市中に販売される蔵米は、一般に米問屋の入札によって払い下げられたが、落札者が蔵役人より受け取る証文を蔵米切手といい、信用の厚い有価証券としてそれ自体通用した。
[北原 進]
1江戸時代,諸藩の蔵屋敷に廻送・販売された米穀。各藩は収納した年貢米を大坂や江戸の蔵屋敷へ搬送,売却・換金して財政収入としていた。そのため,財政がいきづまっていた各藩は蔵米をふやし,貨幣収入の増大につとめた。大坂への入津量は年間約350万俵,蔵屋敷をへず商人によって商品化した納屋米の約4倍であった。
2⇒切米(きりまい)
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…江戸時代,給地を持たない武士に主君が支給する俸禄米のこと。蔵米ともいう。江戸幕府においては,直属の家臣(旗本,御家人)のうちに,知行地を与えられた知行取と,知行地をもたない蔵米取がいたが,後者に与えられたものが切米である。…
※「蔵米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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