融合兵器(読み)ゆうごうへいき(その他表記)fusion weapon

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「融合兵器」の意味・わかりやすい解説

融合兵器
ゆうごうへいき
fusion weapon

水素原子核が融合してヘリウムの原子核をつくるとき放出する膨大なエネルギーを殺傷破壊力として利用する兵器。融合反応を起すためには,数千万度にも達する高温を必要とするため,引き金としてウラン 235またはプルトニウム 239の分裂反応 (原子爆弾原爆〉) を必要とする。また爆弾原料としては重水素または三重水素リチウムとの化合物固体を使用する。この水素の融合兵器を水素爆弾 (水爆) または熱核兵器 thermonuclear weaponという。またこの水爆の周囲をタンパーとして金属ウランで包むと,融合反応から放出された高エネルギー中性子は,非分裂性のウラン 238 (金属ウランの 93%を占めている) に分裂反応を起させ大きなエネルギーを放出し,同時に強い放射性をもつ多量の分裂生成物をつくり,きわめてきたない爆弾となる。融合兵器は,原理的には前から知られていたが,アメリカで開発が決定されたのは,1949年で,ソ連が原爆実験に成功し,アメリカの核の独占が消滅したときである。 52年液体水素 (重水素,三重水素) を原料とする湿式の実験に成功したが,その大きさは大型トラック1台分にも相当するもので,実用に適するものではなかった。 53年ソ連は水素とリチウムの化合物による乾式の実験に成功し,54年にはアメリカは,前に述べた水爆の外側を金属ウランで包む3F爆弾の実験に成功した。その放出エネルギーは 15Mt (TNT1500万t相当) の大型で,風下側に濃い放射能汚染区域をつくった。この放射性降下物を浴びた日本漁船『第五福竜丸』の船員に放射能障害をもたらす事件が起きた。現在までの最大の実験は,62年ソ連の行なった 58Mtであろうといわれている。

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