原子爆弾(読み)ゲンシバクダン

デジタル大辞泉 「原子爆弾」の意味・読み・例文・類語

げんし‐ばくだん【原子爆弾】

核分裂性物質核分裂連鎖反応により、瞬間的に狭い空間で大量のエネルギーを放出する爆弾。昭和20年(1945)8月、ウラン235を用いたものが広島に、プルトニウム239を用いたものが長崎に、それぞれ初めて投下された。原爆。
[補説]広島市8月6日午前8時15分、長崎市は8月9日午前11時2分に投下された。

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精選版 日本国語大辞典 「原子爆弾」の意味・読み・例文・類語

げんし‐ばくだん【原子爆弾】

  1. 〘 名詞 〙 核分裂性物質の核分裂連鎖反応により、瞬間的に狭い空間で大量のエネルギーが放出されることによる爆発を利用する爆弾。昭和二〇年(一九四五)八月六日、初めて広島にウラン235を原料としたものが投下され、同九日には長崎にプルトニウム239を原料としたものが投下された。原爆。
    1. [初出の実例]「飛行機、ラジオ、テレビジョン、電波探知器、原子爆弾といふように」(出典:新能率生活(1945)〈上野陽一〉新日本の能率的建て直し)

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百科事典マイペディア 「原子爆弾」の意味・わかりやすい解説

原子爆弾【げんしばくだん】

ウラン235(235U),プルトニウム239(239Pu)などの原子核分裂の連鎖反応を利用し狭い空間で瞬間的に大量の核分裂エネルギー原子力)を放出させる装置。原爆とも。臨界量(連鎖反応に最低必要な量)以上の核分裂性物質を2以上に分割しておき,火薬の爆発力で瞬間的に合一させ起爆する。米国が1945年7月アラモゴードで実験,8月6日広島(235U爆弾),8月9日長崎(239Pu爆弾)に投下。核分裂性物質約10kgを使用,約1kgが核分裂し,TNT2万t相当の威力を示した。その後一方では広島型より小威力の戦術原爆,他方ではリチウム6(6Li)など熱核物質を含ませて最大TNT50万t相当とした強化原爆などが開発された。→核兵器原爆症
→関連項目大田洋子原子力管理コバルト爆弾3F爆弾水素爆弾第2次世界大戦朝鮮戦争長崎[市]熱核兵器ファットマン丸木俊マンハッタン計画山口仙二リトル・ボーイ連鎖反応ローゼンバーグ事件

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改訂新版 世界大百科事典 「原子爆弾」の意味・わかりやすい解説

原子爆弾 (げんしばくだん)

ウラン235,プルトニウム239などの原子核分裂の連鎖反応のさい放出される核分裂エネルギーを破壊目的に利用した核兵器。原子爆弾が人間の殺傷,住宅の破壊に実際に用いられたのは1945年8月6日広島市,8月9日長崎市においてだけであり,投下したのはアメリカ軍であった。しかも,その直後に行われた日本人科学者や報道カメラマンの調査資料は占領軍によって押収され,また進駐後アメリカが行った調査も長い間公開されなかった。そのため史上に比を見ない残虐無道な原爆災害の実相を,世界の市民は長い間知らず,とくに核保有国の多くの市民たちは,原爆を国家威信の象徴と考えてきた。戦後,ソ連,イギリス,フランス,中国がつぎつぎに原爆の実験に成功したとき,それらの国の市民の圧倒的多数はその報道を熱狂して迎えた。原爆を日本以外の国の市民が真剣に考えるようになったのは,ようやく1980年代初めからで,それも主として西ヨーロッパの市民たちである。それは,それまで〈使われない兵器〉と信じこまされていた原爆が,〈限定核戦争〉の名で自分たちの住んでいるところで実際に使われるおそれがあることに気づいたからである。彼らはユーロシマという言葉をつくり,ヒロシマ,ナガサキを身近に感じはじめた。一方,日本では80年代になって中学教科書からヒロシマ,ナガサキの原爆災害写真が除かれるなど,逆の傾向があらわれてきた。原爆は生き残った人たちにも長年にわたって肉体的・精神的苦痛を与えるが,その生き証人である原爆被爆者に対する援護法も,たびたびの請願にもかかわらずまだ制定されていない。その口実として,被爆者と他の戦争被害者を区別するのは妥当でない,などといわれてきた。にもかかわらず,日本人の大多数はヒロシマ,ナガサキの体験によって,日本国憲法の平和主義,とくに戦力放棄を明文化した第9条の世界史的意味を自覚し,核兵器廃絶の思想を堅持してきた。日本政府もこのことを考慮して,非核三原則(核兵器をつくらず,持たず,持ち込ませず)を国是としている。
核戦略 →核兵器 →原水爆禁止運動 →原爆被爆者 →原爆文学
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子爆弾」の意味・わかりやすい解説

原子爆弾
げんしばくだん
atomic bomb

原爆と略称される。ウラン,プルトニウムなどの原子核分裂に伴って放出される巨大なエネルギーを利用した爆弾。原料としては天然のウランから同位体分離により得られるウラン 235,原子炉中に生じるプルトニウム 239が用いられる。最初の原爆実験は 1945年7月 16日,アメリカのニューメキシコ州で行われ,同年8月6日,広島にウラン 235爆弾 (→リトルボーイ ) ,8月9日,長崎にプルトニウム 239爆弾 (→ファットマン ) が投下され甚大な被害を出した。 1kgのウラン 235が完全に核分裂を起せば,およそ 2×1013 calのエネルギーを放出するが,これは TNT火薬の約2万tに相当する。原爆による被害は爆発時の熱,衝撃および放射線の効果だけでなく,残留放射能による影響も大きい。分裂反応の効率を低下させ,反応量を 1kg以下としたものが小型原爆で戦術用に使用される。超臨界量を使用し,効率を高め反応量を 1kg以上としたものが大型原爆で,それに熱核物質を加えたものを強化原爆といい戦略用に使用される。

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知恵蔵 「原子爆弾」の解説

原子爆弾

ウラン(U)またはプルトニウム(PU)を短時間に核分裂させ、そのとき放出される大量のエネルギーを利用した爆弾。ウラン原爆では、核分裂連鎖反応を起こすのに必要な臨界量に達しない量のウランの塊を間隔をおいて配置し、火薬の爆発力で一気に合体させて臨界量以上にする。広島に落とされたのがこのタイプで、ウランが砲身状の筒の両側に置かれていたガンバレル型だった。通称リトルボーイ。爆発エネルギーは推定でTNT火薬換算16kt相当。一方、プルトニウム原爆は、臨界にならないようにプルトニウムを球形に配置し、その周囲で火薬を爆発させてプルトニウムを圧縮(爆縮)し臨界にする。長崎に投下された原爆がこの型。胴の太い形からファットマンと呼ばれた。TNT火薬換算21kt相当とされる。原爆によって放出されるエネルギーの分布は爆風50%、熱線35%、放射線15%と推定される。1945年に米国ニューメキシコ州アラマゴードで行われた世界初の原爆実験はプルトニウム原爆だった。ウラン原爆は実験なしで実戦に使用された。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子爆弾」の意味・わかりやすい解説

原子爆弾
げんしばくだん
atomic bomb

ウラン235、プルトニウム239などの核分裂性物質の、瞬間的な核分裂連鎖反応で発生する大量のエネルギーを利用した爆弾。アメリカは第二次世界大戦中にマンハッタン計画とよばれる原子爆弾製造計画で、1945年7月16日、アラモゴード砂漠で世界最初の原子爆弾を爆発させ、8月6日には広島に、9日には長崎に、それぞれ1発の原子爆弾を投下して、この二つの都市を壊滅させた。

[服部 学]

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化学辞典 第2版 「原子爆弾」の解説

原子爆弾
ゲンシバクダン
atomic bomb

原子核分裂あるいは核融合反応によって発生する,巨大なエネルギーを瞬時に放出する爆弾.一般に,原子爆弾といえば 235U の核分裂反応を利用したものであるが,このほかには,239Pu の核分裂を利用したもの(プルトニウム爆弾),重陽子と三重陽子の核融合反応を利用したもの(水素爆弾)などがある.原子爆弾の効果には,高熱,放射線,衝撃波の三つがあり,TNT爆弾とは比較にならない破壊力を示す.原子爆弾の爆発力を表すキロトンまたはメガトンという単位は,このTNT相当量の爆発力をいう.

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旺文社世界史事典 三訂版 「原子爆弾」の解説

原子爆弾
げんしばくだん
atomic bomb

原子核の分裂によって生じる放出エネルギーを加害力として利用する爆弾。原爆とも略称
核分裂物質としてはウラニウム235,またはプルトニウム239を使う。1942年12月,アメリカのシカゴ大学で最初の原子炉が運転を開始し,45年7月アラモゴルド実験場で世界初の核実験に成功。8月に広島と長崎に投下され,一瞬にして膨 (ぼう) 大な人命を殺傷した。1949年9月,トルーマン大統領はソ連の原爆保有を確認したと発表し,それと同時にさらに強力な水素爆弾の研究に力を注いだ。こうして1952年にアメリカは水爆実験に成功したが,いっぽうソ連も翌53年8月,水爆の保有を声明するに至り,ここに米ソの核競争が始まった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「原子爆弾」の解説

原子爆弾
げんしばくだん

ウラニウム・プルトニウムなどの核分裂を利用した爆弾
1945年7月,アメリカは初の実験に成功し,ソ連参戦前の日本降伏をはかって,8月6日に広島,9日長崎に投下し,破壊的打撃を与えた。広島で約20万人,長崎で約10万人の死者を出した。また原爆症の患者を多く出した。'49年ソ連,'52年イギリス,'60年フランス,'64年中国,'74年インドが実験に成功。またさらに巨大な爆発力をもつ水素爆弾も,'52年アメリカ,'53年ソ連,'57年イギリス,'67年中国が実験に成功した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「原子爆弾」の解説

原子爆弾
げんしばくだん

原子核の分裂により放出されるエネルギーを利用した核兵器。原爆と略称。ウラン235(広島型)やプルトニウム239(長崎型)がおもに使われる。第2次大戦中アメリカは,ヨーロッパから逃れてきたユダヤ人科学者などの協力を得て原爆開発を推進し(マンハッタン計画),1945年(昭和20)7月16日ニューメキシコ州で世界初の原爆実験に成功。同年8月6日広島,同月9日長崎に原爆を投下した。原爆は放射能汚染ともない,現在でも原爆症で苦しむ人々がいる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「原子爆弾」の解説

原子爆弾(げんしばくだん)

核兵器

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世界大百科事典(旧版)内の原子爆弾の言及

【アインシュタイン】より

…45年研究所を退いたが,その後も研究室をもらって終生研究を続けた。この間,1939年にはL.シラード,E.テラー,E.ウィグナーの要請により,核分裂が軍事的に利用される危険性があることを指摘し,それをナチスが開発する可能性のあることを警告する,シラードの起草になる手紙をアメリカ大統領ローズベルトに書き,これがアメリカの原子爆弾開発計画の発端となった。しかし,彼はこの計画になんら関与せず,その進展についてなにも知らなかった。…

【核兵器】より

…核兵器は,エネルギーを放出するおもな核反応が核分裂であるか核融合であるかによって,核分裂兵器と核融合兵器とに二大別される。前者は原子爆弾(原爆),後者は水素爆弾(水爆)とも呼ばれる。
【開発の歴史】
 1938年ドイツのO.ハーン,F.シュトラスマンらはウランの核分裂を発見した。…

※「原子爆弾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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