核兵器の一種。ウランやプルトニウムの核分裂反応を利用する原子爆弾に対し、水素爆弾は原爆を起爆剤にして核融合反応を起こす。水爆は原爆によって高温を起こし、重水素や三重水素(トリチウム)などの融合反応を誘発させ、大量のエネルギーを放出するため、放出エネルギーは原爆より数百倍も大きい。米国が1954年に太平洋・ビキニ環礁で実施した水爆実験では、付近で操業中だった静岡県のマグロ漁船「第五福竜丸」乗組員23人が被ばくした。(共同)
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ジューテリウム2H,トリチウム3Hの原子核融合反応を利用した核兵器。水爆とも略称。起爆には原子爆弾の高温を利用する。原子爆弾の場合でも実験のさい大気や地下水の放射能汚染等大きな環境破壊が起こるが,水爆になると,その実験でさえ文字どおり地球的規模の放射能汚染を引き起こす。1954年3月より5月にかけてアメリカが太平洋のビキニ環礁で水爆実験を行ったさい,日本のマグロ漁船第五福竜丸は実験の立入り危険区域の外で操業していたにもかかわらず,多量の放射能降灰を浴びた。乗組員全員が大きな放射能障害を受け,久保山愛吉無線長はそれがもとで約半年後に死亡した(ビキニ水爆実験)。またマグロをはじめとする魚介類に著しい放射能汚染が見られた。広島・長崎の被爆から10年も経過しないで日本人が水爆の直接被害を受けたことに,多くの日本人は強い衝撃を受けた。湯川秀樹は同年3月末《毎日新聞》に〈原子力と人類の転機〉と題する一文を寄せ,その中で〈原子力の脅威から人類が自己を守るという目的は,他のどの目的よりも上位におかれるべきではなかろうか〉,また〈人類の一員としてこの問題を考える〉と書いた。これはそのまま1年後の〈ラッセル=アインシュタイン宣言〉に受けつがれた(〈パグウォッシュ会議〉)。その後もアメリカ,ソ連,イギリスは水爆実験を続け,大気圏上空に舞い上がった大量の放射性微粒子は,ジェット気流にのって,北半球全域を汚染しつつあった。これを憂慮して核実験禁止の世論が世界的に高まったが,交渉は遅々として進まず,ようやく1963年8月〈大気圏,大気圏外空間,および海水における核兵器実験を禁止する条約〉がアメリカ,イギリス,ソ連の間で調印・発効した。しかし,フランスと中国は参加を拒否した。この条約が〈部分的核実験停止条約〉ともいわれるのは,その後の核兵器開発で最も重要とされる〈地下核実験〉を除外しているからである。
→核戦略 →核兵器
執筆者:豊田 利幸
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重水素や三重水素など、水素の同位元素の原子核が、核融合反応をおこして発生するエネルギーを利用した核兵器の一種。熱核兵器ともよばれる。現在は原子爆弾が爆発したときに生ずる高温を利用して核融合をおこさせており、原子爆弾よりもずっと爆発威力が大きい。本格的水素爆弾は、アメリカは1954年、ソ連は1955年に完成させた。イギリス、フランス、中国、インドも水素爆弾をもっている。1961年ソ連が約60メガトンの爆発を行ったのが、世界最大である。小型水爆の開発も進められている。
[服部 学]
(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)
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核兵器の一種。水爆と略称。起爆には原子爆弾を用い,その高温によりジュウテリウムとトリチウムの原子核融合反応をひきおこし,膨大なエネルギーが放出される。その際深刻な放射能汚染をもたらし,水爆実験による後遺症は今なお問題となっている。日本では1954年(昭和29)の第5福竜丸事件を契機として原水爆禁止運動が盛り上がるとともに,世界的にも核実験禁止の世論が高まり,63年には部分的核実験停止条約(地下核実験を除く)が締結された。96年には包括的核実験停止条約が締結され,2013年3月現在183カ国が署名しているが,発効の目途はたっていない。
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…核兵器は,エネルギーを放出するおもな核反応が核分裂であるか核融合であるかによって,核分裂兵器と核融合兵器とに二大別される。前者は原子爆弾(原爆),後者は水素爆弾(水爆)とも呼ばれる。
【開発の歴史】
1938年ドイツのO.ハーン,F.シュトラスマンらはウランの核分裂を発見した。…
…(化学式)この反応に基づき,トリチウムの製造を原子炉(分裂炉)を用いて行うことができるが,核融合炉ではDT反応自身によって生ずる中性子を用いて自己増殖させることも可能であり,その目的にリチウムを装荷したブランケット部を炉心プラズマの周囲に設けることが必要となる。 このようにDT反応,DD反応などを用いると,地上で巨大なエネルギーを取り出すことができるが,その実用はすでに水素爆弾(水爆)という型で達成されている。これらの核融合兵器において,点火に必要とされる超高温は核分裂爆弾(原爆)によって発生される(核兵器)。…
※「水素爆弾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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