血液疾患

内科学 第10版 「血液疾患」の解説

血液疾患(ほかの疾患に伴う肝障害)

(6)血液疾患
 血液疾患における肝障害の原因には,造血器腫瘍の浸潤,骨髄移植輸血による肝炎ウイルスの感染やヘモジデローシス,化学療法などの治療薬による薬物性肝障害やHBVの再活性化などがある.
a.悪性リンパ腫(malignant lymphoma)
 悪性リンパ腫は高頻度に血行性に肝へ浸潤し,進行例では半数以上に肝病変が存在する.一方,肝原発のリンパ腫の頻度はきわめて低く,節外性リンパ腫の0.4%にすぎない.わが国では44%,欧米では10%が慢性肝炎肝硬変に続発している.50~60歳の中年に好発し,男女比は3:1,おもな症状は腹痛,肝腫大,体重減少でAST,ALT値の上昇に比し,LDHとALP値の上昇が著明である.アイソザイムでは,LDH2,3が上昇し肝由来のLDH5はあまり上昇しない.可溶性IL-2受容体の上昇が診断に役立つ.病変の形態は,孤立性が60%,多結節型が35%,びまん性浸潤型が5%である.組織学的には非Hodgkinリンパ腫で,80%がB cell typeである.
b.多発性骨髄腫(multiple myeloma)
 肝への浸潤はまれであるが,アミロイドの沈着が数%の症例に認められる.
c.白血病(leukemia)
 白血病では肝腫大をきたすことが多いが,肝機能障害は一般に軽微である.頻回輸血によるヘモジデローシス,白血病治療薬や抗菌薬による薬物性肝障害,輸血によるウイルス性肝炎の発症,免疫低下によるHBVの再活性化などを疑うべきである.
d.移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)
 移植片対宿主病は移植片中のドナーT細胞がホスト抗原を非自己と認識し,ホストの臓器を攻撃する病態であり,骨髄移植や輸血後に発症する.急性GVHDは移植後100日以内にみられ,皮膚,肝,消化管が標的臓器となり,皮疹黄疸,下痢を特徴とする.肝障害は黄疸が主症状で,直接型ビリルビンの上昇が特徴である.AST,ALT値の上昇は軽度のことが多い.慢性GVHDはおもに移植後100日以後に発症するGVHDの総称で,種々の臓器を標的とし多彩な症状を呈する.移植後のQOLを低下させ,感染症の合併により生命予後に影響する.限局型の症状はかゆみを伴う扁平苔癬様皮疹と肝障害が主である.全身型では皮膚障害と肝障害に加え,Sjögren症候群に類似した口腔乾燥と涙腺分泌低下,慢性閉塞性肺疾患などを呈する.輸血後GVHDは,輸血後1〜2週間で発症し,死亡率が高い.[西口修平]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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