血管雑音(読み)けっかんざつおん(英語表記)vascular murmur

改訂新版 世界大百科事典 「血管雑音」の意味・わかりやすい解説

血管雑音 (けっかんざつおん)
vascular murmur

血流速度の増大,血液粘性の減少,血管壁の粥(かゆ)状硬化などによって生ずる血管の雑音動脈瘤(りゆう),動静脈瘻(ろう)などで発生するが,正常でも動脈を強く圧迫すると発生する。動脈瘤の雑音は収縮期雑音で軟らかく短い。これに対して動静脈瘻の雑音は,より強く,心臓周期全体にわたって聴取され,収縮期に一致して強くなり,機械性雑音machinery bruitと呼ばれている。ときに,動静脈瘻でも収縮期に著しく亢進し,純粋に収縮期の雑音のように聴かれることがある。また,大きな動脈瘤の場合には,拡張期にも雑音を聴取できることがある。閉塞性動脈硬化症や大動脈炎症候群(高安病)でも,血管に限局的な狭窄がある場合,その部位で収縮期雑音が聴取される。前者では,頸動脈,大腿動脈,腸骨動脈などが好発部位で,大動脈で聴取されることもある。大動脈弓症候群では大動脈弓分岐部で,大動脈縮窄症では縮窄部に一致して収縮期雑音を聴くことが多い。また,上腸間膜動脈や腎動脈の狭窄(前者は腹部アンギーナ後者は腎血管性高血圧症)などでは収縮期雑音が主症状の一つとされている。バージャー病や動脈の単純血栓症ではふつう血管雑音を生ずることはないが,限局的な動脈攣縮(れんしゆく)では血管雑音が聴取できることがあるとされている。胸郭出口症候群では,上肢を鎖骨下または腋窩(えきか)動脈を圧迫するような位置にしたときに,部分的狭窄を起こした部分で収縮期雑音が聴取される。

 静脈性の雑音としては,成人の頸静脈で拡張期に増強する連続性の雑音が聴取できることがあり,右側に多く,独楽こま)音venous humと呼ばれている。立位または座位をとると著しく,ふつう臥位では消失する。小児でも同様な雑音が胸鎖関節上で聴取できることがあるが,一般に臨床的意義は少ないとされている。また,臍(さい)静脈の先天性開存を伴う門脈圧亢進症(Cruveilhier-Baumgarten症候群)で,腹壁の拡張した静脈で雑音を聴取することがあるが,これは連続的でハイピッチである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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