日本大百科全書(ニッポニカ) 「衛生ボーロ」の意味・わかりやすい解説
衛生ボーロ
えいせいぼーろ
南蛮菓子から変化した乳幼児用の干菓子。乳児がウェファーなどとともに初めて口にする固形の菓子で、離乳期のおやつとして用いられる。原料はジャガイモデンプン、砂糖、鶏卵で、膨張剤には炭酸アンモニウムを使用する。生地(きじ)は十分に練り上げ、小さなボール状にして焼く。
衛生ボーロの原点となるボーロは、16世紀なかばにポルトガル人によりもたらされた。ボーロの小麦粉を、消化のよいジャガイモデンプンにかえたのが衛生ボーロで、昭和初期ごろは人気のある菓子だった。『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(1830)によると、「南蛮菓子はほうるの類なるべし、万治(まんじ)年間(1658~61)振売(ふりうり)の物の内」とあり、その振売りの許可証は家持(いえもち)のものには交付されなかったという。家産を失って初めて天秤棒(てんびんぼう)を担ぐ資格ができた。これは「家を棒に振る」の語源であるが、当時ボーロは振売りの商品となるほど大衆化していた。
[沢 史生]