日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭酸アンモニウム」の意味・わかりやすい解説
炭酸アンモニウム
たんさんあんもにうむ
ammonium carbonate
炭酸のアンモニウム塩で、一水和物(NH4)2CO3・H2O 式量114.1のみが知られており、無水和物は得られていない。炭安とよばれる市販品は、炭酸カルシウムと硫酸アンモニウムの混合物の加熱、昇華により製造されたもので、炭酸水素アンモニウムNH4HCO3とカルバミン酸アンモニウムNH4CO2NH2の複塩あるいは混合物である(白色塊状)。これを濃アンモニア水に溶かして冷所に数日放置すると、炭酸アンモニウムの一水和物が得られる。光沢のある無色の斜方晶系微結晶。水によく溶ける(15℃の水100グラムに100グラム)が、エタノール(エチルアルコール)、二硫化炭素には溶けない。空気中に放置するとアンモニアを発生しながら徐々に炭酸水素アンモニウムに変わる。固体は58℃で、水溶液は70℃でアンモニア、水、二酸化炭素に分解する。各種アンモニウム塩の製造原料、分析用試薬となるほか、制酸剤など医薬品としても用いられる。
[鳥居泰男]