デジタル大辞泉
「衣手」の意味・読み・例文・類語
ころも‐で【衣手】
[名]《衣服の手の意から》着物の袖。たもと。多く、和歌に用いる。
「妹とありし時はあれども別れては―寒きものにそありける」〈万・三五九一〉
[枕]
1 衣手をひたす意から、「ひたち」にかかる。
「―常陸の国の二並ぶ筑波の山を」〈万・一七五三〉
2 「あしげ」にかかる。
「―葦毛の馬のいなく声」〈万・三三二八〉
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ころも‐で【衣手】
[1] 〘名〙
① (着物の手の意から) 衣服の袖。たもと。古くから、多く和歌に用いる。
※
万葉(8C後)一七・三九六二「はしきよし 妻の命
(みこと)も 明け来れば 門に寄り立ち 己呂母泥
(コロモデ)を 折り反しつつ」
② (転じて) 着物全体をいう。
※曾丹集(11C初か)「よはをわけはるくれ夏はきにけらしとおもふまなくかはるころもて」
※俳諧・談林十百韻(1675)上「
奉加すすむる荻の上風〈志計〉 衣手が耳にはさみし筆津虫〈
卜尺〉」
④ 香木の名。分類は
伽羅(きゃら)。源実朝の歌「梅が香は我が衣手に匂ひ来ぬ花より過る春の初風」を証歌として、後水尾天皇が命名したという。
[2] 枕
① 着物の袖を濡らすところから、濡らす意の「ひたす」と同音を含む「
常陸(ひたち)」にかかる。
※
常陸風土記(717‐724頃)総記「国俗
(くにぶり)の諺に、筑波岳に黒雲かかり、
衣袖(ころもで)漬
(ひたち)の国といふは是なり」
② 「葦毛
(あしげ)」にかかる。かかり方未詳。
一説に、衣手の色の「葦毛」色という意でかかるという。
※万葉(8C後)一三・三三二八「衣袖(ころもで)葦毛(あしげ)の馬の嘶(いな)く声情(こころ)あれかも常ゆ異(け)に鳴く」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報