デジタル大辞泉
「伽羅」の意味・読み・例文・類語
きゃら【×伽羅】
《〈梵〉kālāguruの音写「伽羅阿伽嚧」の略。また、tagaraの音写「多伽羅」の略とも》
1 ジンコウの別名。香木として有名。
2 香料の一種。ジンコウなどの香木の樹心から製する良質の香。
3 「伽羅木」の略。
4 よいものをほめていう語。
「姿こそひなびたれ、心は―にて候」〈浄・十六夜物語〉
5 江戸時代、遊里で、金銭のこと。
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きゃら【伽羅】
- 〘 名詞 〙
- ① ( [梵語] kālāguru (kālā は伽羅、黒の意、aguru は阿伽、沈香の意)の略。また、tāgara (多伽羅、零陵香と訳す)の略ともいう ) 沈香の優良品。香木中の至宝とされる。〔伊京集(室町)〕
- [初出の実例]「傾城に金銀を遣す外に、伽羅(キャラ)を贈る事を心にかくべし」(出典:評判記・色道大鏡(1678)二)
- [その他の文献]〔陀羅尼集経‐一〇〕
- ② 優秀なもの、世にまれなものをほめていう語。極上。粋。
- [初出の実例]「立すがた世界の伽羅よけふの春〈蘭〉」(出典:俳諧・隠蓑(1677)春)
- 「姿こそひなびたれ、心はきゃらにて候」(出典:浄瑠璃・十六夜物語(1681頃)二)
- ③ 江戸時代、遊里で、金銀、金銭をいう隠語。〔評判記・寝物語(1656)〕
- ④ お世辞。追従。
- [初出の実例]「なんの子細らしい。四相の五相の、小袖にとめる伽羅(キャラ)ぢゃ迄と仇口に言ひ流せしが」(出典:浄瑠璃・壇浦兜軍記(1732)三)
- ⑤ 「きゃらぼく(伽羅木)」の略。
- [初出の実例]「前には伽羅(キャラ)や躑躅や木犀などの点綴された庭が」(出典:田舎教師(1909)〈田山花袋〉一一)
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伽羅 (きゃら)
サンスクリットのカーラーグルkālāguruまたはカーラーガルkālāgaruの語頭を音写した語。また,同じく香の一種であるタガラtagara(香炉木と訳される)を音写した多伽羅の語頭を省略したものであるとする説もある。黒沈香(香木)の意である。奇南,伽藍,伽楠などと書写される。葉庭珪の《香録》,洪芻(こうすう)の《香譜》に黒沈香が優品で占城(チャンパ)を産地と記している。黒色で油分の多いものを良品とする。中国では産出しない。日本では昔から珍重されたがすべて輸入による。江戸時代には何ごとによらず良質なものを伽羅油,伽羅下駄,伽羅人のごとく呼んだ。
→香木
執筆者:吉岡 司郎+神保 博行
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伽羅【きゃら】
香木の一種。サンスクリットのカーラーグルの語頭を音写した語で,伽藍,伽楠などとも書写された。熱帯産のジンチョウゲ科の樹木が土中に埋もれ,樹脂が浸出し,香木となったもの。江戸時代には腹痛をなおし,精を増す薬ともされた。東大寺正倉院御物の蘭奢待(らんじゃたい)はその最高品。日本では昔から珍重され,何であれ良質なものをさして,伽羅油,伽羅下駄などと呼んだ。→沈香
→関連項目アロマセラピー
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伽羅
ベトナムを主とした東南アジアで採れる、ジンチョウゲ科の常緑高木沈香(じんこう)から採取した香料「沈香」の中で最優品のこと。沈香の生木あるいは古木を土中に埋め、腐敗させて生産する。そのまま小さく割って焚くのが一般的だが、高級な線香の原料としても使用されている。貴重なものとして乱獲されたことから、現在では、絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引を管理・規制する国際条約「ワシントン条約」の希少品目第2種に指定されており、許可がないと日本国内に輸入できない。2014年7月、伽羅は今後も価格が上昇することが期待されるため、中国人が私有財産の投資先として目をつけ、買い占めたことにより価格が急騰。伽羅の主な需要先である日本の寺社が困惑していることが報道され、話題となった。
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普及版 字通
「伽羅」の読み・字形・画数・意味
【伽羅】きやら
梵語tagara(多伽羅)の略。インド・中国の南方に産する香木から取った香。黒沈香。〔玄応音義、一〕多伽羅香、此れを根香と曰ふ。字通「伽」の項目を見る。
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伽羅
から
古代,朝鮮半島南部にあった小国の総称。伽耶 (かや) ともいう
古くから日本との関係が深く,4世紀ごろから日本の勢力下に入ったとされる。しかし6世紀中ごろまでに新羅 (しらぎ) によって滅ぼされた。
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伽羅
きゃら
香木の一種。沈香,白檀などとともに珍重された。伽羅はサンスクリット語で黒の意。一説には香気のすぐれたものは黒色であるということからこの名がつけられたという。茶道では真の香とされている。
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伽羅
きゃら
香木の銘。東南アジアに産するジンコウ属の樹木を土に埋め、心材から採取する。香道では最高の名香とし、優美、宮人のごとしとして、珍重されている。
[猪熊兼勝]
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伽羅 (キャラ・メイボク)
植物。イチイ科の常緑針葉低木,園芸植物。キャラボクの別称
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世界大百科事典(旧版)内の伽羅の言及
【香道】より
…また稽古用の香木は市井の薬種商で取り扱っていたことは香道の底辺をうかがわせる。 香道に手の届かない人々にとっても香は憧れの的であり,とくに[伽羅](きやら)は珍重され,化粧用のみならず,すばらしいもの,高貴,良質,豊饒,稀有なるものの代名詞であった。関白や大大名といえども慎重に扱うべき貴重品であり,分限者も疎略にすべからざるものであった。…
【香木】より
…彼が所持した177種の名香木は死後東山殿の所有に帰したと伝えられる。
[六国五味]
香木の名称については,伽羅木(きやらぼく),伽藍木(からんぼく),伽南木(かなんぼく),棋楠(きなん),奇楠(きなん)などと諸書に書かれているが,いずれも伽羅のことで,香木の佳品を総称する場合もある。16世紀天正ころの《建部隆勝筆記》,蜂谷宗悟《香道軌範》,さらに《山上宗二記》等には伽羅,羅国(らこく),真南班(真那蛮)(まなばん),真南賀(真那賀)(まなか)および新伽羅の名称が見え,これに佐曾羅(さそら),寸門多羅(すもんだら)を加えて6種に分類し,これを〈香の六国(りつこく)〉と称した。…
※「伽羅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」